2024年7月16日
企業価値創造経営の本質(第47回)
事業ポートフォリオ・マネジメントについて
考える(第19回)
手島 直樹
小樽商科大学大学院 商学研究科 教授
今回の連載においても、前回から引き続き事業売却の概要について考えてみたい。
事業売却には企業価値創造のパラダイムシフトが求められる
事業売却は、一般的な企業価値創造の考え方と大きく異なる。一般的な考え方とは、保有する投下資本から最大限のリターンを生み出す、というものだ。たしかに、売上とROICが2大事業バリュードライバーであることを考えれば、この考え方こそ、企業価値創造の原則となる。よって、この原則に基づけば、経営者の役割とは投下資本が持つポテンシャルを最大限に引き出すことであると定義され、経営者は事業の改善にエネルギーを注ぐことになる。
しかし、結論から言えば、こうした「オペレーション志向」は事業ポートフォリオ・マネジメントに悪影響を及ぼしかねない。もちろん、事業の改善には「オペレーション志向」が不可欠であり、その視点がなければ、投資資本から最大限のリターンを生み出すことは不可能である。しかし、経営者が企業の持つポテンシャルを最大限に引き出すためには、「オペレーション志向」では不十分なのだ。
2024年7月16日