2020年3月2日
マネジメント・アイ
未来とマクロ環境:
中期経営計画策定に必要な検討領域
泉本 保彦
株式会社日仏経済戦略研究所
代表取締役社長
izumimoto@i-es-fj.com
スイスの⾷品、飲料のコングロマリットであるNestléは、マクロ環境の変化を捉えてビジョンや戦略を転換した好事例と言える。今日彼らはそのホームページの"Strategy"という項⽬で、"当社の成功は、栄養、健康、ウェルネスの戦略に基づいています。 食品と飲料がNestléの中核ですが、私たちは、1日のあらゆる時間帯において、ライフステージのあらゆる段階において、最も美味で健康的な選択肢を、最適な方法で提供させていただくことを目指しています"と謳っている。当社は1867年スイスでHenri Nestléによって開発されたコンデンスミルクをベースとしたベビーフードを市場導入したことに始まる。その後M&Aを繰り返し、今ではベビーフード、医療食品、ミネラルウォーター、朝食用シリアル、コーヒー、ティー、製菓、乳製品、アイスクリーム、冷凍食品、ペットフード、スナック等を製造・販売する売上高10兆円を超えるコングロマリットとなった。設立以来、自ら食品と飲料の企業であると言っていたが、1990年代終盤、ある事業環境変化に見舞われる。健康食ブームである。その後彼らは、世界一のウェルビーイング企業を目指すと言い始めた。また、1970年代以降、母乳に代わる育児方法の乳児への悪影響、ココア生産における児童労働への依存などでボイコットや批判も受けて来た。このことは、一企業が戦略を策定する上で、顧客や競合他社だけを見ていては経営が成り立たないことを物語っている。
2020年3月2日