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2023年2月1日 

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インタビュー

時代の要請に合わせて変わる勇気を持ち続ける

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吉田ルリ子 氏

日本精工株式会社 執行役員 法務コンプライアンス本部長

1991年7月 日本精工株式会社入社
2000年8月 経理部
2015年6月 財務本部 グループ管理部副部長
2018年4月 人材マネジメント本部 コーポレート人事部長
2021年4月 執行役 経営企画本部副本部長
2022年4月 執行役員 法務コンプライアンス本部長

1991年7月に日本精工株式会社入社。2000年8月から2018年4月まで経理部門を経験。J-SOX導入やIFRS(国際会計基準)移行などの社内プロジェクトに多数携わる。2018年4月に人事部門へ異動となり、海外地域本社の経営層のタレントマネジメントを担当。2021年4月経営企画本部副本部長、2022年4月より執行役員、法務コンプライアンス本部長。

聞き手

淵邊 善彦

日本CLO協会 理事
ベンチャーラボ法律事務所 代表弁護士

淵邊 本日は日本精工株式会社(以下NSK)の執行役員、吉田さんに登場いただきました。吉田さんは人事部門、経理部門を長く歩いてこられて、いま法務関係で役員を務められています。伝統的なメーカーの中での女性役員、人事・経理畑を歩いてこられての法務担当役員という従来とは少し異なった観点から話が伺えるのではないかと楽しみにしております。まずは、これまでのキャリアから教えてください。

吉田氏 1991年5月にアメリカの大学を卒業後、新卒で7月にNSKに入社しました。当時バブル期で、同期は100人ほどいました。

 入社後は人事部門を歩み、2000年から経理部門に移り18年間過ごしました。経理部門に移った2000年は「会計ビッグバン」と言われた年で、キャッシュフロー計算書や退職給付会計、税効果会計といった大きなパラダイムシフトが起こりました。IFRS(国際会計基準)への移行なども経験しながら過ごしました。

 2018年から3年間は人事部門に戻り、グローバルの人事部門を束ねる部門を担当しました。当社は指名委員会等設置会社なので、報酬委員会の事務局も行っていました。2021年、経営企画本部の執行役副本部長に就き、1年間過ごしました。この年は、コーポレートガバナンス・コードの改定という大きな変化がありました。2022年から法務コンプライアンス本部の本部長に就任しています。

経理・人事の経験が法務で活きる

淵邊 経理と人事でダイナミックな変化を経験されています。そうした経験は法務部門で役立っていますか?

吉田氏 とても役立っています。経理や人事部門で、色々なプロジェクトにも関わらせてもらうことができました。私は、配属の順序がユニークで、経理は連結決算からスタートして、最後の最後に法人税や単体決算を担当しています。学校で言えば、最初に大学院に入って、大学に行くというような順番です(笑)。普通の人とは学びの順序が異なるかもしれません。

淵邊 今まさに連結で見る時代になってきています。NSKは多数のグループ会社がありますが、現場を分かっていることが非常に大事だと思います。現場を知らずに、法務が内部統制やコンプライアンスの掛け声をかけても、うまく回っていない会社は多いと思います。そういう意味では、吉田氏さんは広い視野で見ることができる立場におられる。

吉田氏 ありがとうございます。NSKは世界中に111社のグループ会社があり、3万人の従業員がいます。海外グループ会社では、人事兼経理兼法務といった役割で働いている人も多く、長年一緒に仕事をしている仲間たちもかなりいます。

 信頼関係があるところからスタートすると、新しい取り組みやプロジェクトの協力などが進めやすい。「現場を知っている」とおっしゃっていただいた部分は、そうした感覚に現れているかもしれません。

コロナ禍でのクロスボーダーM&Aと機能する内部通報システム

淵邊 関わられてきたさまざまなプロジェクトの中で、印象に残る案件は?

吉田氏 多くの案件に関わってきましたが、最近の法務関係で一つ例を紹介すれば、コロナ禍の2020年に行った、欧州企業の事業部門の買収では、コロナ禍で渡航が制限される中、以前では想像もできなかったリモートのデューデリジェンスでした。クロスボーダーですから時差もありますが、社内・社外のチームワークをフルに活用しました。よい経験をさせてもらいました。

淵邊 コロナ禍においては契約交渉も大変でしたね。リモートのデューデリジェンスはとても疲れそうです。

吉田氏 本当に大変でした。その頃から優秀な社内弁護士や法務スタッフがおりました。「よく頑張ってくれているなあ」と思っていましたが、自分が担当することになるとは思っていませんでした。

 それ以外では、当社の特徴でもありますが、法務とコンプライアンスが一体となって仕事をしています。内部通報という大切な会社の改善活動の旗振り役もしておりますので、一件一件の大切な通報に関して、時には寄り添い、時にはロジカルに、時には通報者の方の気持ちに感謝しながらも伝えるべきことは伝える。そうしたことも、一つひとつとても記憶に残るものになっています。

淵邊 内部通報システムが機能している?

吉田氏 ワークしていると思います。先輩方がこれまで、一件一件寄せられる通報に関して、まっすぐに誠実に取り組んでこられた賜物だと思います。

淵邊 窓口の在り方について工夫はされていますか?

吉田氏 当社は、社外の弁護士とも契約しており、安心して通報できる窓口もあります。社内のメールアドレスに来る案件も併せて、偏りがなく利用されている印象はあります。

NSKの法務部門のかたち

淵邊 法務担当役員の具体的な役割についておうかがいします。法務部門の組織はどのようになっていますか?

吉田氏 法務コンプライアンス本部の中に法務部と通商管理部があり、法務部の中に法務チームとコンプライアンス推進室があります。法務部長の下にコンプライアンス推進室長がいるのが特徴です。

 通商管理部は歴史が古く、1987年です。そこから当社の輸出管理がよりシステマティックに運用されるようになり、コンプライアンスプログラムを経済産業省に提出しています。通商管理部の仕事も非常に重要で、該非判定の責任者として私も判定に携わっています。

淵邊 最近、経済安全保障が一つの大きなテーマになっており、脚光を浴びている部署でもあります。

吉田氏 そうですね。2022年5月に経済安全保障推進法ができましたが、通商管理部の知見を活かして、情報を幅広くキャッチし、法務的なアドバイスを加えて社内に展開しています。当社に直接、影響しないことでも、お客様が関わっている可能性もありますから、情報キャッチと展開を日頃から心がけています。

淵邊 法務部門の人員構成は?

吉田氏 法務部とコンプライアンス推進室が、現在それぞれ10名、通商管理部は13名で、ほぼ3分の1ずつといったイメージです。

淵邊 社内弁護士もおられますか?

吉田氏 日本の弁護士資格を持った者が3名、アメリカの弁護士資格を持った者が1名おります。

淵邊 男女比は?

吉田氏 当社の会社全体の女性比率11%に比べると、法務・コンプライアンス部門は多いです。2~3割といったところでしょうか。

淵邊 契約チェックやコンプライアンス等の業務は、国内、海外で分かれていますか?

吉田氏 当社には、産業機械事業と自動車事業があります。グローバルに本部制をとっており、事業本部と機能本部のマトリックス組織となっています。法務の契約等の相談も、事業本部×機能本部に応じて、法務の中で窓口を設けています。語学が堪能なメンバーが多く、海外案件、国内案件といった分け方ではありません

ナショナリティやジェンダーを飛び越える働き方

淵邊 コーポレートガバナンス・コードの中でも、女性や外国人、あるいはいろいろなスキルの方々を取締役にして、多様性を持たせようとしています。メーカーでは数少ない女性役員として、お感じになることはありますか?

吉田氏 実は、経理部門にいたときの上司は、常務執行役のイギリス人でした。上司のほうがマイノリティなわけです。直前の人事部門でコーポレート人事部長をしていたときは、海外法人の人事担当と毎日のように電話や会議をしていました。そういう意味では、ナショナリティやジェンダーを飛び越えるような働き方をしてきました。

 もちろん国籍やジェンダーに関わらず、一人ひとりに個性があり、特徴があります。それぞれが得意な部分を活かして、不得意なところは補い合っていくチームワークが重要だと思っています。

 日本、あるいはメーカーという特徴を考えると、確かに女性は少ないですが、国境を越え、日本国内でも業界を越えれば、決して女性が極端に少ないわけではありません。日本経済団体連合会のダイバーシティのレクチャーにもときどき顔を出しますが、全員女性で「こんなにいらっしゃるんだ!」と驚くほどです。そういう意味では、さほど孤独を感じることもありません。最近、活躍されている女性が増えているので、ジェンダーを意識する機会が減ってきているようにも思います。

距離の近さを生み出すもの

淵邊 法務コンプライアンス本部長として、経営陣とはどのような関わり方をされていますか。社長から直接、相談が来るのか、取締役会を通じて経営に参加されるのか。そのあたりはどうでしょうか。

吉田氏 私は上司の執行役常務を介して社⻑に提言するという立場で、ワークしています。

 経理部門や人事部門に在籍していた頃から、報酬委員会事務局、役員会事務局をやっておりましたので、マネジメントとの距離はかなり近く、そうした経歴があまりトップとの距離を感じさせないのかもしれません。

淵邊 貴重で稀有な経験ですね。これだけの規模の会社になると、法務部長が取締役と直接関わる場面は少ない会社が多いと思います。

吉田氏 そうなのですか。私が初めて経営会議に出席したのは、経理部門で国際会計基準適用の承認をもらうときでした。法務部門は上申する側にはあまり回らないかもしれませんね。

淵邊 本来は新しいビジネスをつくるとき法務部門がしっかりとチェックし、かつ進言する役割は大きいと思うのですが。

吉田氏 淵邊先生は著書で、臨床的法務、予防的法務、経営法務の三つを挙げられていますが、やはり臨床はしんどいですよね(笑)。

 臨床的法務のみでトップマネジメントと話す機会はなかなか難しいですが、そこで力を発揮してきたことで、会社での信頼を勝ち得ていると思います。

淵邊 法務が臨床だけに関わっていたのでは、経営との距離感が近づかないように思います。それがCLOが日本で普及しない原因の一つだと感じています。吉田さんは、これまでのバックグラウンドを活かせる立場にいらっしゃるし、人柄もありますよね。内部通報の話にもありましたが、相談しやすさ、あるいは事前にちょっと聞いてみようと思える雰囲気はとても大事だと思います。

吉田氏 「ちょっと雑談ベースで」という感じですね。

淵邊 かしこまった場だけで意見を聞くのではなく、オフの場でちょっと相談できるのは、意外に大事ですよね。

吉田氏 おっしゃるとおりだと思います。弁護士さん同士もそういう雑談があると聞いていますし、どこでも同じだなと思いました。

淵邊 今、経営会議や取締役会はハイブリッドですか?

吉田氏 対面も増えてきました。リモート会議、ハイブリッドの会議もあります。

淵邊 やはり議論や雑談する場の減少は、心配な面はありますね。

吉田氏 おっしゃるとおりです。

信頼される法務になるために

淵邊 信頼される法務になるために、求められるものは何だとお考えですか?

吉田氏 重要なことが二つあると我々は考えています。一つ目は、法務の知識です。これは当然備えるべきスキルです。二つ目は、会社のことを知ることです。会社を知らずして的確なアドバイスや進言はできないし、戦略法務にも入っていけない。

 会社のことを知るには、寄せられた質問や相談一件一件に対して、あいまいな部分を残すことなく、分からないところまで徹底的に聞くことです。それを実直に繰り返すしかないと、社内弁護士の法務部長とも日頃から話しています。

淵邊 会社を知るには、人事的な発想や経理的な発想も大事になってきます。日々の業務に忙殺される中で、そこまで勉強するのは大変そうですが、そうした部分を知ることは、後々大事になってきそうですね。

吉田氏 そうですね。我々はそうした部分を含めて勉強会を開いています。コロナ以降、回数が減っているので、また増やしていきたいと思っています。

淵邊 リーガルテックのようなツールも充実してくる中で、ツールに頼ってしまうと現場を知る機会が抜けてしまう危険性もあります。教育の大事なポイントだと感じています。

 会社を知るために「話を聞く」というのも大事な指摘です。話をまず聞いてビジネスを理解する、ディールを理解することなしに、先に進もうとすると、後になって困ることになります。現場のニーズを聞いて、事実関係を確認する。「聞く技術」は、法務にとってとても大事な部分ですね。

吉田氏 「聞いてもいいんだよ」ということです。聞くことは恥ずかしいことではないし、聞くことで人間関係が構築できます。「人は話を聞いてもらえると嬉しくなる」ということを、私は人事で学びました。

 聞くにも、「聴く」、「聞く」、「訊く」などいろいろありますが、「話を聞く」ことは、100%アグリーすることではありません。相手の考え方を知る、つまり相手を知ることが非常に大事なのです。これは社内だろうが、社外との契約だろうが同じです。重要なのは、顔の見えない相手に思いを馳せて、「どんな経緯でこうした主張をしてきているのか? なぜだろう?」と考えることです。実際に話を聞かないまでも、「話を聞いているように考える」ことも大事だと思います。

企業風土を重視し、グループ全体の一体感を築く

淵邊 海外グループ会社の管理について、工夫されていることはありますか?

吉田氏 当社は31の国と地域にまたがって活動していますが、地域本部制を敷いていますので、日本の法務部が31カ国すべてとやり取りをすることはありません。

 弊社法務部は20名強の陣容とお話ししましたが、グローバル全体では、44名ほどの法務人員がいます。各地域本部の中にいる法務部担当役員、法務担当、コンプライアンス担当の人たちと定期的に打ち合わせを行い、信頼関係を築いています。今はリモートになりましたが、コロナ以前は、年2回、各国から担当者が集まって、グローバル法務会議を開催していました。

 地域によっては隔月、頻度が高いところとは毎月、法務部の地域担当者が情報交換を行っています。コロナ禍でもリモート会議で顔を合わせ、抱えている案件や困りごとなど、密接なやり取りを行っていました。メールだけのやり取りではなく、日頃から会議を設けて顔を合せているので、何かあったときのレスポンスが早く、協力体制も構築しやすい。これは、私が異動してくる前からとてもよくやってくれています。

淵邊 そうした風土を築くきっかけがあったのでしょうか?

吉田氏 我々は2011年にカルテル事件で大きな学びを得て、コンプライアンスの強化をしています。今でも年に1回、「企業理念の日」を設けて1年を振り返り、企業風土を重要視する姿勢をさまざまなイベントを通じて打ち出しています。役員たちのパネルディスカッションを行ったり、コロナ禍での心理的安全性をテーマにした動画を若手社員が中心となって作成してさまざまな職場で展開できるようにするなど、毎年趣向を凝らしています。そうした積み重ねが活きているのだと思います。

淵邊 コンプライアンス本部が主導している?

吉田氏 そうです。法務コンプライアンス本部が旗振り役をしてきました。

 会社として共通の価値基準として、安全、品質、環境、コンプライアンスの四つのコアバリューを掲げています。NSKで働く人すべての人が判断のよりどころとする価値基準の一つとして、コンプライアンスは掲げられています。コンプライアンス委員会は2022年4月から「コアバリュー委員会」に生まれ変わりました。コンプライアンスは安全、品質、環境のそれぞれの委員会や組織に共通する価値基準ですから、より密に力を合わせていきたいと思います。これからも横のつながりを重要視していきたと思っています。

淵邊 独占禁止法違反等は大きな会社では常に起こり得る話だと思います。繰り返さないためには、現場に近いところで腑に落ちるような教育が必要なのでしょうね。

吉田氏 はい。教育は非常に重要です。教育一つでは解決になりませんが、教育なしでは前に進みません。

ワークする指名・報酬委員会

淵邊 ところで、日本では指名委員会等設置会社があまり増えません。御社の指名委員会や報酬委員会は実質的に機能していますか?

吉田氏 当社が指名委員会等設置会社へ移行したのは2004年でかなり早いです。外国人の役員登用の歴史も古い。そういう意味では、歴史のある会社ですが、新しいものに対してオープンな社風があったのかもしれません。例えば、報酬委員会は非常にワークしていて、会社の報酬のスキームにはESGの指標を入れています。

淵邊 早くからグローバル展開しているから、日本のドメスティックな会社とは発想が違っていた?

吉田氏 これまでも、今も社長は海外勤務経験も豊かな方たちばかりで、異文化や多様性に理解があるのだと思います。

変わらなければならない部分は常にある

淵邊 素晴らしい会社だと感じますが、あえて課題を挙げるとするなら?

吉田氏 女性の進出が進んだと言っても、会社全体の女性比率は11%です。これは会社の課題というより、日本という国の課題、国⺠性の課題かもしれないと考えるときもあります。

 日本の文化の特徴にプロセスの重視があります。日本の官庁の優秀な方々の働きぶりも当社のやり方も、共通してプロセスを重要視しています。それは内部統制を利かせるためになくてはならない考え方ですが、法律にも立法の趣旨があるように、それぞれのプロセスにも目的や理由があります。やはり時代に合わせて変わっていかなければならない部分は常にある。これは法務だろうが、事業部だろうが同じです。そうした時代の要請に合わせて変わっていく勇気を持ち続けることは、非常に重要だと思います。

広いフィールドで自信をもって活躍を!

淵邊 これから会社を支えていく、法務で成長していく若い人たちに向けてメッセージをお願いします。

吉田氏 志高い若い法務部員たちに、「なぜ、法務部を希望したの?」「なぜ、難しい司法試験を受けようと思ったの?」と聞いてみると、「役に立ちたかったのです」と、さらっと言います。貢献意欲が高く、成長意欲も高いから法学を勉強しているのです。

 貢献意欲が高くて、優秀で成長意欲がある人材は、もっと高みを目指していかなければなりません。だから、私は経営を目指してほしいと思っています。自分たちができることは、まだまだたくさんあることに気がついてほしいし、もっと自分に自信を持って前に出てほしい。

 コーポレートガバナンス・コードの勉強をするときに、松田千恵子先生が「コーポレートガバナンス・コードの強化は、法務部員が活躍するチャンス」とおっしゃっている記事を拝見したことがありました。法務的な物の考え方、ファクトに基づいて論理的に物事を説明する力は、雰囲気や気持ちに流されがちな世の中でとても大事な部分です。そうした力を、コアのスキルセットとして持っている法務部員、法務コンプライアンス本部員が活躍するフィールドは、広いはずです。もっと自分たちができることに自信を持って、「こうしよう」と発信してもらいたいと思います。

淵邊 そのためには何が必要でしょうか?

吉田氏 日本は、あまり褒めない文化、フィードバックが少ない文化です。海外の人とプレゼンテーションや会議をすると、彼らは必ず“Thank you for your presentation”と謝意を示し、なおかつ“Super!”“Great!”と普通に褒めます。日本人だけの会議では褒めることはほとんどありません。フィードバックは必ずしも耳当たりのいいことばかりではありませんが、「こういうところがよかった」と褒めて、「さらなる改善はこうだよ」と順番に教えてあげればいいのです。「あ、今のよかったね」を繰り返しで、若い人たちは自己肯定感を高めることができます。私の世代や先輩の方々には、「もっと若い人たちを褒めてあげましょう」「甘くするのではなく、自己肯定感が高まるような育成をしていってあげましょう」という声かけはしていきたいです。

淵邊 これは、我々世代の反省点かもしれません。自分が厳しく後輩を鍛えて「這い上がってこい」という教育を受けてきたので、同じような教育になりがちです。しかし、それでは視野は広がらず、閉じこもってしまう部分も出てくる。人を育てることについて、議論を呼び覚ますという意味からも、意識的にそうしたことを行っていくことが必要なのでしょうね。

 日本の会社の根性論の強さは、これまで日本を覆ってきた男社会、体育会系の悪癖かもしれません。それでは、これからグローバルに戦っていけないのではないかという印象を持ちました。

吉田氏 エールをもらうのは大事です。オリンピックでもワールドカップでも、周りの「頑張れ!」という応援に選手たちは大きな力を得ます。部下たちも上司から「応援してもらっている」と思うと、力が発揮できると思います。

淵邊 サッカーワールドカップの日本代表もそんなイメージでしたね。本日は、お忙しい中よいお話をありがとうございました。

吉田氏 こちらこそ、ありがとうございました。

《特別動画》インタビューを終えて

2023年2月1日

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