2023年10月16日
グローバル・コミュニケーション
都市の言語景観
猿橋 順子
青山学院大学国際政治経済学部教授
一般社団法人グローバル・ビジネスコミュニケ―ション協会理事
はじめに
通りを歩いていても、交通機関を利用していても、ひと息つこうとベンチに腰掛けても、実に多くの情報が目から耳から入ってくる。言語学の一分野に言語景観研究(Linguistic Landscape Studies, LLS)というものがある。端的に言えば、公共的な場所に認められる言語を研究する分野だ。「景観」という言葉が示すように、視覚的に認められる書き言葉が中心となるが、音声によるアナウンスや、目が見えない人に情報を提供する点字なども分析の対象に含まれる。
言語景観研究の意義
言語景観を研究する意義はいくつかある。例えば複数の言語が国語や公用語としてある国では、地域や町によってどの言語が優勢であるかを見定める1つの指標となる。言語政策等によって、マイノリティ言語の保護政策がとられているような場合、言語景観はそれを後押しする手段にもなり得るし、その効果を把握する資料ともなる。
2023年10月16日