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2025年2月17日 

 1969年に大学を卒業し、丸紅で18年間勤務した私は、87年から米国で弁護士活動を始めた。所属した事務所は、1868年(日本では明治維新の年)に創設された米国でも最も古い事務所の1つだ。創業者エリフ・ルートは後に政界に進出し、セオドア・ルーズベルト大統領の下で国務長官を務め、1912年にノーベル平和賞を受賞している。

 私が入所した1987年当時、パートナーのほとんどは米国の超一流大学のロースクールの卒業生で、私は日本人初の弁護士だった。日本人として米国で弁護士資格保持者であることは特別の意味を持たず、米国人弁護士の受け売りでは通訳としての価値しかない。生き残るには、米国人弁護士が提供できない価値あるサービスを作り上げることが必要だった。右も左も分からない中でもがき、考え、自分なりのビジネスモデルの構築に努めた。この時、役立ったのが丸紅での18年間のサービスを受ける側としての経験だった。

 私は自分の役割をオーケストラの指揮者のようなものだと考えている。米国の弁護士は各人専門分野に特化している。優秀なヴァイオリニストでありピアニストではあっても、全体を見通したマネージができない。しかし、実際に発生する問題は、多様な法律分野にまたがっている。クライアントのゴールを実現するには、各々の法律分野の関連性はもとより、クライアントの置かれた社会的な背景やビジネス上の制約、意思決定の方法など法律分野以外のことも考慮しながら、数多い要素をバランスよく取り入れた総合的な判断が求められる。こうしたサービスは米国の弁護士には提供できない。特にリスクマネジメントやガバナンス分野では個々のケースが異なり、その時々の状況に応じたテーラーメイドのサービスやアドバイスが求められる。そうして35年間、私は正しい結論を伝えるだけでなく、そこに至るプロセスや考え方を説明し、クライアント自身がバランスの取れた意思決定ができるよう促すことに努めてきた。

2025年2月17日

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