2024年5月15日
企業価値創造経営の本質(第46回)
事業ポートフォリオ・マネジメントについて
考える(第18回)
手島 直樹
小樽商科大学大学院 商学研究科 教授
前回までの連載では、M&Aをテーマとしてきたが、今回からは事業売却を取り上げることにしたい。まずは、数回にわたり事業売却の概要について考えてみたい。
事業ポートフォリオ・マネジメントのサイクルは「売却」で完了する
これまで議論してきたM&Aと事業売却は、事業ポートフォリオ・マネジメントにおいて「売り」と「買い」という両極に位置付けられるが、実態としては表裏一体の関係にあるといえる。というのも、事業ポートフォリオ・マネジメントのベストプラクティスの1つは、M&Aと事業売却の「二刀流」であるからだ。つまり、「売り」と「買い」という2つの真逆の「道具」を同時に使いこなす能力が企業には求められることになる。実際、どちらか一方に特化するよりも、「二刀流」の株価パフォーマンスが高水準であることが、さまざまなリサーチから示されている。また、言うまでもないが、「買い」だけでは事業ポートフォリオが複雑化し、「売り」だけでは会社が縮小する一方となる。
2024年5月15日