2023年10月16日
財務マネジメント・サーベイ
改正リース基準に関わる実態調査と分析
─IFSR16号適用企業の対応状況を参考にしよう─
中田 清穂
一般社団法人日本CFO協会 主任研究委員
公認会計士
2023年5月2日に、企業会計基準委員会(ASBJ)は、リース基準を改正するための公開草案(本公開草案)を公表した。
現行のリース基準は、国際財務報告基準(IFRS)や米国の会計基準(FAS)と同等の会計基準にするべく、2007年に改正された。しかし、IFRSやFASのリース基準は、2016年にさらなる改正が行われ、IFRS第16号などとして、2019年1月1日に開始する事業年度から適用された。
2007年の時点では一旦、IFRSと同等レベルになった日本のリース基準だが、またまたIFRSやFASとの間に大きな相違が発生してしまった。そこで今般、冒頭に示したように、ASBJは日本のリース基準を、IFRS第16号と同等レベルにするために、本公開草案を公表した。
今回の改正の主なポイントは、以下の3項目である。
①すべてのリース取引を、資産・負債計上(オンバランス)の対象とする(従来のオペレーティングリースや不動産賃貸借物件も対象となる)。
②「会計上のリース」として取り扱うべきかどうかは、契約の内容を吟味して、個々に識別する必要がある(契約上、「貸借」などの文言がなくても、「会計上のリース」とされる場合がある)。
③リース期間はリース契約に明記されている期間になるとは限らない(更新や延長なども考慮して、リース期間を見積もる必要がある)。
上記のことから、新たにリース資産(使用権資産)やリース負債の計上を余儀なくされるケースが増加し、業種や企業によっては、巨額になる可能性もある。さらに、対象物件の洗い出し、影響度調査あるいはシステム対応など、企業の実務への対応が懸念される。
本公開草案によれば、会計基準として最終化された後、強制適用まで2年しかない。
このようにリース基準の改正は、企業の実務への影響が大きいことが予想されるために、一般社団法人日本CFO協会では、すでにIFRS第16号を任意適用している企業(以下、適用企業)と、日本基準で決算を行っている企業(以下、非適用企業)の双方に対して、リース基準への対応について実態調査を行った。
2023年10月16日