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2021年11月16日 

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はじめに

 今日は「ESGとコーポレートファイナンス」をテーマに1時間ほどお話をさせていただきたい。

 私の専門はファイナンス、ESGとコーポレートファイナンスで、京都大学の経営管理大学院で教えている。最近、京都大学でもESG関係の研究が盛んで、全学を挙げてフォーラムを組むなどしている。私も京都大学ESG研究会の座長補佐を務めたり、ESG情報開示研究会で勉強させていただき、ファイナンスとESGを結びつける研究・教育をしている。

 著書にコーポレートファイナンスや企業価値評価に関するものがあるが、この秋にも日経BPから『ゼミナール コーポレートファイナンス』という本を出版予定である。この本は、ESGやサステナビリティを取り入れて書いた。ESGがコーポレートファイナンスのパフォーマンスと結びついているという実証研究等はたくさんあるが、教科書に載るほど確立されたものではないので、恐る恐る、いろんなパートでESGに言及した。ESGあるいはサステナビリティを意識しながらテキストを書いていると、「あ、この企業のこういった戦略は、もともとESGと深く関係があったのだな」と、あらためて気づかされることがあった。ほかにも、この本の特徴として、事業戦略・経営戦略との関係を重視していること、エクセルによる財務モデルを多用していることが挙げられる。出版されたら、日本CFO協会を通じて皆様にアナウンスさせていただきたい。

 最初に今日の話の概要を述べると、【1】バリュエーションと価値創造経営で、普遍的な観点からバリュエーションと価値創造経営について振り返る。日本の企業あるいは日本全体が、コーポレートファイナンス・価値創造という教科書的に正しい方向に進んできたので、まずはそれを紹介する。【2】コーポレートガバナンス・コードと企業価値では、資本利益率と資本コストの関係をしっかりと確立・維持していくことの重要性をお伝えしたい。さらに、資本利益率が資本コストを上回る状況でサステナブルにやっていくという観点から、ESGについてお話しする。【3】ESGとCFPの関係では、最近、ESGのパフォーマンスとコーポレートファイナンスのパフォーマンスの関係について学術研究が進んできて、我々も実践的な取り組みをしているので、そのお話をさせていただく。最後に【4】京都大学での取り組みについてご紹介したい。

 まず、ビジネスに求められる能力は、企業内のポジションにより異なる。『週刊ダイヤモンド』(2018年3月3日号)のアンケート結果を見ると、会計・ファイナンスに関しても、求められる知識・能力は役職によって違うようだ。まず、役員には「ファイナンスの概念や投資の評価方法」の理解が求められる。役員は意思決定・判断が仕事なので、投資案件や新規事業案件等を的確に評価する必要があるからである。部長の場合は、現場のほうも見なければならないので、「ROEやROAなど、財務3表上の数値を組み合わせた指標」が大事になる。課長や一般社員は、自分たちの業務に関する数値を見る必要があるので、「財務3表」あるいは「売上高と利益」の理解が大切である。このうち、今日は日本CFO協会でお話をさせていただくので、役員に焦点を絞りたい。

 ここでちょっとご紹介したいのが、ハーバードビジネススクールの経営リテラシーのカリキュラムだ。1年目の必須科目が10科目あり、前期に5科目、後期に5科目を履修するのだが、注目したいのはFinanceだけは前期・後期の両方で勉強するということだ。

 いろんな理由があると思うが、一つは、ファイナンスは「領域が広い」ということがあるだろう。企業の中での価値創造について考えるには、資本コストを考える必要があり、資本市場では、どのようなメカニズムで価格がつくのかを理解しなければならない。つまり、企業の中の活動と資本市場の両方を学ぶ必要があり、領域が広い。

 「学ぶべき用語が多い」こともあるだろう。しかし、ファイナンスで勉強するトピックや用語は、そのまま実務で使える。例えば、WACC、ROIC、DCF法、サステナブル成長モデル、キャッピングといった用語は、実務に必要な知識であり、グローバルで通用する共通言語なので、学んだことが長く生かされると言える。

 また、おそらく「確立されている理論が非常に大きく、しっかりしている」ということもあると思う。ファイナンスは、経営学の中でも経済学に近いところがあり、ノーベル経済学賞をとった先生方の理論や考え方がしっかりと入っている。例えば、資本政策のモジリアニ・ミラーの理論、WACCを計算するときに使うCAPM、ポートフォリオ理論、デリバティブ等々で、こういうことを勉強するには、時間がかかるためだと思われる。

 つまり、ファイナンスは重要なビジネスのリテラシーであると同時に、一度学べば何年経ってもどこに行っても使える科目であると言える。

2021年11月16日

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