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2016年12月15日 

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Insight

会社の競争力を引き上げるCFOの新たな役割②
PMI(Post Merger Integration)を
成功させるカギ

寺川 尚人

テラ・マネジメント・デザイン株式会社 代表取締役社長
株式会社Indigo Blue 代表取締役社長

 昨今、M&Aが当たり前になってきた。会社の競争力を高めるためや不足していた事業領域を強化するため、また、規模の経済やマーケットシェアやポジションを獲得するために大胆な経営を目指し始めたからだ。一方、買収した会社が当初の思惑通りに機能せず、経営のハンドリングに苦慮している会社も多くある。一般的なM&A前のデューデリジェンスは会社の資産や強み、不良資産やリスクを財務的、法務的な視点で、技術・マーケットを中心に見て判断することが多い。是非ともBSやPLには表面化しないインタンジブル・アセットもしっかり見極めることをお勧めする。

 インタンジブル・アセットの中で、社風や組織風土、マインドや価値観、意思決定の仕方、経営層の質や組み合わせの可能性、人材の質や活用実態、人事制度や人材のポートフォリオ、健保や年金等の現状課題、特許や知財の強さなどがビジネスのベースになるが、なかなか表面化せず、見えにくい領域をできるだけ掴む工夫が必要だ。特に社風や組織風土の違いは、良い意味で融合・適用できると今までにできなかった強い組織風土になり、掛け算や乗数のようにビジネスインパクトを生み、M&Aをやった成果と今後のトランスフォーメーションを仕掛けることにより、新たなチャレンジの可能性を生む。一方、いつまでも融合せずに、水と油のように、お互い力を掛け合わすことができずにいる会社も多い。買った後の想定しているイメージや経営の仕方のルールが決まらないまま統合が進んでしまうからだ。

 よくある話として、買収を成功させる交渉メンバーと、買収後うまく機能させようとする受け入れメンバーが違うことから、合併する前の話と実際の運用が違うことですれ違いが起きるケースがある。得てして、この買収チームには組織や風土、人事制度等の人事テーマの掘り下げが足りず、買収後のタイミングからいろいろと人事課題が表面化するケースが多い。

 PMIを成功させるひとつのポイントは、M&Aに値するかどうかの人的資産の精査、カルチャー融合の検討をしっかり掴み、絶対逃げられてはいけないキーとなる人材は誰で、如何に会社へ留まってもらうかのアクションを設計し、買収後、速やかにその具体的な対応スケジュールを実行することである。また、会社の社風や組織風土、組織感情が違うものを認め合い、どのように新しい組織風土の定着と融合をうまく図るかがカギを握る。経営統合のイメージをどれだけ想定して準備するかで、確率は大いに違う。

 買う会社も買われる会社も不安が取り巻く中で、如何に目指すべき方向を理解させ、会社同士の信頼感を醸成するかが大事である。

 忘れてはいけないのは、買われる会社だけが不安なのではなく、買った会社と一体化する中で、ポストの統合が行われれば、ひとつしかないポストについては、むしろ買った会社の人材がそわそわするケースも多い。要は心理的なアプローチをどれだけ丁寧にやるかでその後の成功が決まる。また、オーナー系の会社を買収すると、オーナー側にそれ相当のお金が入り必然的にやる気を失うケースもある。

 そういう中で、最初にこの買収が意味のあるものにできるか否かは、キー人材の引き留めのために、買収元のトップと買収先の経営陣などが初めの行動について話し合う場を作り、信頼感や安心感のあるメッセージを発信することが大変重要になる。それらをどのようにデザインし、人を見極め、対応をするかが経営の役割となる。キー人材が欲しくて行う買収の場合は、ことさらこのことは大変な意味を持つ。

 経営とは心理学であると言う。M&Aでは真に的を射た言葉である。そもそも違う会社の生い立ちがあり、別の育ち方をした会社が、買収されたからと言って簡単に変わるものではない。お互い距離感を探り、どのように上手くやるかを見つけるプロセスを如何に本音ベースでやるか、信頼に値する人材がいるのであれば、戦略的パートナーとして、裁量権を想像以上に与えることにより、これまで踏み込めなかった領域まで頑張る傾向が強い。譲れるものと譲れないもの、強引に変えてもらうものを決めることや逆に相手の良き部分を社内に導入する懐の広さも大事である。対等合併というケース程、厳しさと優しさ、バランスと最適な登用、そのあたりを上手くやれるかどうかで、合併を行った効果が必然的に見えてくる。

 今求められているのは、会社にとって未来を拓く人材とは何かである。特にこの企業の将来を誰に託すことができるかどうかである。どのような経緯で入ったか、買収で入ってきた人材とか子会社に入った人材とかにこだわるのではなく、何ができるのかを常に客観的に、バランスのある目線で人材を見る(見極められる)能力をCFOと人事責任者は持ってほしい。それを、トップと常に検証することで、確実にその目的を達成できる目線が磨かれる。同時にCFOは経営やビジネスに貢献できるように目配りできれば、強い経営体質と、プロセスをものにすることができる。

2016年12月15日

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