2025年2月3日

エッセンシャルズ
日本製鉄によるUSスティールの買収から考える
松田 千恵子
東京都立大学大学院経営学研究科教授
日本製鉄が2023年12月、米国の老舗鉄鋼メーカーUSスティールを143億ドルで買収すると発表してからはや1年。トランプ新大統領になって以降の動向はまだ不透明だが、25年1月の段階では、バイデン大統領(当時、以下同)が国家安全保障上の懸念を理由に買収を禁止する命令を出すに至ったのはご記憶の通りだ。日本製鉄は違法な妨害行為でバイデン米大統領らを提訴したと発表し、USスティールのCEOからも「バイデン大統領の行動は恥ずべきものだ」「経済・安全保障上の重要な同盟国である日本を侮辱している」といった批判がなされている。一方、日本製鉄から買収妨害行為で民事訴訟を提起された米鉄鋼会社クリーブランド・クリフスと同社最高経営責任者(CEO)、全米鉄鋼労働組合(USW)会長は激しく反発しており、クリーブランド・クリフスのローレンコ・ゴンカルベスCEOは、「日本は中国より邪悪でひどい」「日鉄は中国に鉄鋼の過剰生産やダンピング(不当廉売)の方法を教えた」などと吠えた。この先まだまだ波乱は必至だろう。改めて海外M&Aがクローズアップされているともいえる。
2025年2月3日