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2021年10月15日 

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M&A/PMI戦略にESGの視点を導入し、
さらなる企業価値向上につなげる

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小島 秀毅(こじま ひでたか)

米国公認会計士/日本CFO協会グローバルCFO
株式会社SHIFT グループ経営推進部 部長

2003年東京外国語大学外国語学部卒業。2009年一橋大学大学院商学研究科経営学修士課程(MBA)修了。2019年 ハーバード・ビジネス・スクールPLD修了(PLDA)。
大和証券、GCAを経て、2011年に三菱商事にてライフサイエンス本部(現・食品化学本部)立ち上げと合わせて同社に入社。食品化学事業において国内外のM&A/PMIを推進し、グループのコア事業に育てる。2020年からはSHIFTのグループ経営推進部でM&A/PMIを一貫して行える体制を組成し責任者を務める。これまで国内外の数多くのM&A/PMIに携わり、特に米国駐在の経験から北米を中心とするクロスボーダーM&A/PMI戦略の立案と実行を強みとする。近年はM&Aに関するセミナーの登壇やM&A専門誌等への寄稿も多数担当。
著書: 『クロスボーダーM&Aの契約実務』(共著、中央経済社/2021年)

はじめに

 昨今、SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)やESG(Environment, Social, Governance:環境・社会・ガバナンス)に対する関心がより一層高まってきており、特に上場企業にとってはESGに配慮した経営を行うことが多様な投資家を呼ぶための必須条件となっている。国連が公表したPRI(Principles for Responsible Investment:責任投資原則)の中でESGについて言及されたことや、日本でもGPIF(Government Pension Investment Fund:年金積立金管理運用独立行政法人)が運用資金の一部にESG投資を組み込み始めたことにより、当初は“形だけのESG投資”と揶揄された部分も少なからずあったものの、最近は「インパクト投資」として幅広い投資家にも認知されている。SHIFTも2021年6月にUNEP FI(United Nations Environment Programme Finance Initiative:国連環境計画・金融イニシアティブ)により策定された「ポジティブ・インパクト金融原則適合型ESG/SDGs評価型融資」によるM&Aの融資枠設定をソフトウェア業界初として行った。

 一方で、多くの企業はESG戦略やその具体的な取り組みを明確に打ち出せず、企業価値向上につなげることができていない。それどころか、そもそもESGが企業価値向上につながるのかといった懐疑的な見方が未だに残っているとさえ感じることもしばしばある。正直、私自身も以前は「ESGなんて綺麗事で利益に結び付けられるものではない」と考えていた。ところが、 “ESG経営”を実践して世の中をドラスティックに変えている企業を見るにつれ、その考え方は根底から変わっていった。実際、明確なESG戦略を打ち立てている企業は総じて業績が良く、株価のパフォーマンスも高い。また、ESGスコアの高い企業は、より有利な条件で資金調達が可能となり、ファイナンス面から定量的にも把握しやすくなっている。グリーンボンドやサステナブルボンドなどのいわゆるESG債は、ここ数年投資家の需要も高く、有利な条件で発行できるケースが多い。このように、ESG経営を推進することは、従業員のエンゲージメントを高め、生産性が向上し、高い顧客満足度につながるといった売上増加の要因だけでなく、資本コストの引き下げにも寄与し、結果として企業価値向上に結び付くことが明らかとなってきている。

 今回はSHIFTのSDGs/ESGへの取り組みも紹介しながら、M&A/PMI戦略にESGの視点を導入し、ステークホルダーの期待に応えながら、企業価値向上につなげる施策について考察する。

SHIFTのSDGs/ESGへの取り組み

 現在、SHIFTは中期成長戦略である「SHIFT1000」の実現に向け、営業体制の強化や様々な課題解決手段を持つ企業のM&Aに取り組み、品質保証を軸としたサービスの拡充を推進している。幅広いサービス機能を持つことで、顧客のあらゆる課題解決に対応できるようにし、社会課題の解決を含む「スマートな社会」の実現を目指している。その実現に向け、具体的に取り組んでいるSDGs/ESGは以下の通りである。

SDGs

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ESG

①品質保証事業を通じた社会への貢献
 ソフトウェアの品質保証事業により、安定したサーバー環境の維持、個人情報漏洩の防止、セキュリティの強化といった基本的な機能の着実な実装、UI/UXの高い製品の創出など、ソフトウェアが滞りなく動くことを支える。「無駄のないスマートな社会の実現」に向けて、安心・安全で快適なソフトウェアの開発支援に貢献する。

②品質保証事業を通じたIT業界への貢献
 日本のIT業界には様々な課題が存在している。それらのうち、SHIFTは特に「IT人材不足の解消」と「業界構造の変革」に対して重点的に取り組んでいる。

●IT人材不足の解消
 SHIFTの採用活動においては、CAT検定と呼ばれる独自に開発した検定試験を活用している。プログラミングやIT業界での知識・経験の有無に関わらず、ソフトウェアテストに関して真に必要な素養を持った人材をこのCAT検定で選定し、入社後に活躍できる仕組みを構築したことで、非IT人材であってソフトウェアテストに素養のある人を即戦力として採用することができるようになった。結果として、IT人材の創出に貢献していると考えている。

●業界構造の変革
 SHIFTが解消に向けて取り組んでいる「多重下請け構造」と呼ばれる日本のIT業界の構造は、日本のエンジニアの低賃金や過重労働問題の要因の一つであるとされている。SHIFTが「ソフトウェアの品質保証専門企業」として、ユーザー企業と直接コミュニケーションをとり、また、多くのSIer企業と協力してきた経験を活かし、階層構造や企業規模に関わらず真に業務能力/案件への適性のある開発会社への受発注を実現していく。

③多様な人材への就業機会の実現
 SHIFTは人材採用においてCAT検定を活用することで、個人が持つバックグラウンド(学歴、職歴)や特性(性別、人種、国籍、年齢、宗教、思想、身体上のハンディキャップ、その他個人的な特性)に関わらず、ソフトウェアテストに素養のある人材の採用を実現している。結果として、サービス、飲食、アパレル、公務員など、様々な業界から転職した優秀な人材が第一線で活躍するなど、多様な人材の活躍の場の提供にも取り組んでいる。

④社会への環境負荷の低減
 SHIFTが提供するソフトウェアの品質保証の価値の一つは「ソフトウェア開発工程の効率化」である。プロジェクトごとにかかる工数・負荷を削減し、投下されるリソースや環境資本を削減することで、気候変動を含む環境課題解決へ貢献していると考えている。加えて、SHIFTのグループ会社であるSNCは中古パソコンのリユース事業を実施している。リユース事業を通じて、廃棄予定だったパソコンやデスクトップを削減し、社会全体におけるハードウェアの製造予定量を削減することで、CO2排出量の削減に貢献している。

2021年10月15日

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