2014年11月14日
はじめに
企業の法人税等の負担率(実効税率)の多寡がある程度、税務戦略の巧拙を示すことは事実であるが、単に負担率比較で税務戦略の巧拙を判断することは拙速である。ポイントは、法定実効税率と実効税率の差の調整項目を検討することである。税務戦略の巧拙の分析目的から注目すべき調整項目は、(1)試験研究費等の特別税額控除等 、(2)在外子会社の税率差異 、(3)評価性引当額 、(4)永久に益金(損金)に算入されない項目の4つである。
実効税率に影響を与える項目
(1)試験研究費等の特別税額控除等
本連載第1回で述べたクラレの例から明らかなように、試験研究費等の特別税額控除等を洩れなくとると税金の支払いが少なくなり、それは100億円近い売上に匹敵する経済的利益を企業にもたらす。つまり、試験研究費等の特別税額控除等は実効税率を下げ、ROE(自己資本利益率)を著しく向上させる効果がある。
(2)在外子会社の税率差異
在外子会社の税率差異は、本邦法人税の外国子会社配当益金不算入制度のもたらす効果によって生じる差異である。外国子会社配当益金不算入制度とは、外国子会社において留保された利益を日本に配当しても、その配当の大部分は、本邦で課税されない取り扱いのことである。日本の法定実効税率は、現在約36%である。しかし、諸外国の法定実効税率は20%から25%である。仮に外国子会社が法定実効税率20%の国とした場合、100の税引前利益から留保できる利益は80もある。しかし、同様な利益を日本の親会社が計上した場合、留保できる利益は64しかない。つまり、税率の低い国で事業すると多くの経済的利益を企業にもたらす。そして、それが配当されても日本で課税されないのであるから、日本の法定実効税率より低い国にある在外子会社の税率差異は実効税率を下げる効果がある。
2014年11月14日