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2017年2月15日 

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民主主義というシステムの難しさ

 2016年は6月の英国のEU離脱(BREXIT)、11月の米国大統領選挙という世界を驚かせる強烈な弾が2発飛び出した。12月にはイタリアで憲法改正を巡る国民投票が行われ改正案が否決された。政権側の敗北で銀行への増資問題など先行き不透明さが増している。こうした状況を見て感じるのは「民主主義」というシステムの難しさである。国民投票や大統領選で民意がどのように形成され、国の将来にどのような影響を与えるかの予測は極めて困難になっている。

 米国大統領選挙では、私を含めて多くの予測を覆すトランプ氏勝利の結果が出たわけだが、一般投票数では270万票差でクリントン氏が勝っている。米国有権者約2億2,000万人中、実際に投票した1億1,000万人のうちの270万人=3%弱クリントン氏が上回ったが、獲得選挙人数で敗北した。その内訳も、ウィスコンシン、ミシガン、ペンシルバニアの3州で合計10万票の差で選挙人46人がトランプ氏側に入った。勝敗の差は“行って来い”で4万5,000票に過ぎなかった。4万5,000人の投票が世界に波乱を起こしたのと同義だ。

 こうした結果を生んだ要因の一つが低投票率である。クリントン氏にも、トランプ氏にもしっくりこない人が多かったということだ。もう一つの要因が白人女性の投票行動である。トランプに投票したと言われるラストベルト(Rust Belt:さびついた工業地帯)の白人労働者に加えて、同地域の白人女性の62%がトランプに投票したという。いずれの候補も積極的には支援したくないが、自分たちが置かれた過去8年間をハッピーでなかったと感じた人が消去法的に一斉にトランプに流れた結果であったとも言える。

 同じことが英国のEU離脱についても言えよう。英国がEUを離脱した際に生じる問題を考えたうえで離脱に投票したのではない。移民問題が引き金と言われるが、実際には移民が多い地域は残留に投票し、移民が少ない地域が離脱に投票したという妙な結果になっている。そういう意味でも、民主主義の運営は非常に難しい。

 経済や社会の流れから取り残され、忘れられていると感じている人々、所謂レフトアウト(left out)の不満が噴出した選挙であったとも言える。地域、学歴、所得、人種といった観点での少数派、マイノリティグループの権利を強める動きは、オバマ政権8年間より以前からあった。しかし「白人労働者の権利はどうなっているのか?」という訴えに対する回答が出されたことはなく、かつて労働組合の指示のもと民主党に投票していた白人の中所得者層の票が民主党に流れなくなった。レフトアウト問題は、単に英米の問題ではなく、ヨーロッパ全体の問題であり、日本でも潜在的な問題となりつつある。

 こうした中で民主主義をいかに運営していくか。ウィンストン・チャーチルの名言に「民主主義は最悪の制度である。その他の制度をすべて除いては」というものがある。チャーチルは「アメリカは常に最良の判断をする。すべての最悪の判断をしたあとで」とも言っている。社会的格差・溝がある中での民主主義の運営の難しさを言い表した言葉でもある。2017年のオランダの総選挙、フランスの大統領選挙でも、レフトアウトの人々の投票パターンは非常に読みづらく、今後の政策予測も難しくなっている。

2017年2月15日

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