2019年9月17日
この夏の日米ヒット映画から
時代を考える
久原 正治
久留米大学理事
昭和女子大学現代ビジネス研究所特別研究員
新海誠監督『天気の子』(2019年7月19日公開)
ジョン・ファウブロー監督『ライオン・キング』(2019年8月9日公開)
暑い夏は冷房の効いた映画館の大画面で大衆娯楽映画を見るに限る。夏の大ヒット作は、年間観客動員数でも1、2位となることが多いので、その時代の大衆の関心がどの辺りにあるのかよくわかる。
昨年(2018年)夏は、邦画では『劇場版コード・ブルー─ドクターヘリ緊急救命─』と『万引き家族』が観客動員数1、2位であった。前者では、異なる専門職からなる女性リーダー中心の救命チームの活躍と葛藤がうまく描かれていた。後者は現代の貧困がテーマで、祖母と母親の母系が率いる、血のつながりがない家族が万引きを重ねながら生きる姿が淡々と描かれていた。戦争や政治といった大上段に構えたテーマではなく、身の回りの世界で生きる人々の小市民的な日常がテーマである。平成の長く続いた閉塞する経済状況下で、何とか生きている人々の姿が大衆の共感を得たものと思われた。
2019年9月17日