2025年8月1日

米国弁護士 秋山の視点
雇用における仲裁制度の導入
─米国雇用訴訟を回避するための切り札─
秋山 武夫
ニューヨーク州弁護士
雇用訴訟が多発する理由
米国で事業展開する多くの日系企業が、雇用訴訟の洗礼を受けている。また、実際に訴訟経験がない企業であっても、訴訟リスクを過度に意識することで、雇用上の自由な経営判断が制約を受ける事態が発じている。
雇用訴訟の代表例が、いわゆる雇用差別訴訟である。「差別」という語が単に「取り扱いの差異」を意味するのであれば、企業は従業員全員を差別しているとも言える。賃金、地位、職務内容など、すべての従業員が一様であることはない。こうした差異は本来、経営の裁量に属し、経営権の一部を構成するものである。違法な差別とは、その中でも特定の要素―人種、宗教、性別など―を理由とする扱いの差異を指し、例外的に法律により制限された領域に過ぎない。
2025年8月1日




