2017年3月15日
財務マネジメント・サーベイ
CFOの報酬体系と企業のリスクテイク
井上 光太郎
東京工業大学 工学院経営工学系 教授
調査の概要
本レポートで報告する『企業の財務リスク管理と、CFOに対するインセンティブ・スキームに関する調査』は、日本CFO協会の協力を得て、2016年11月に実施したアンケート調査である。このアンケートは、企業のリスクテイクおよび財務リスク管理の状況と、CFOの皆様の報酬体系、個人的なリスクへの態度、ならびに企業のリスクテイク行動等の関係を学術調査することを目的としている。
企業のリスク管理の重要性は当然のことであるが、一方で企業の成長のためには積極的リスクテイクが不可欠であり、そのための動機付け手段としての報酬体系の重要性が指摘されている。こうした考えは日本版コーポレートガバナンスコードにも反映されている。私たちは、この調査を通して、CFOの皆様のリスクの受け止め方や報酬スキームが企業行動に与える潜在的効果を学術的に明らかにし、日本企業が長期的な成長を遂げるための報酬スキームの設計への情報提供をすることを目的としている。現在は、調査結果を整理し基本的な検証を開始している段階だが、いくつかの興味深い結果が出てきているので、サーベイにご協力をいただいた方々へのフィードバックを兼ねて、報告をさせていただく。
なお、以下の分析は、神戸大学大学院経営管理研究科准教授の山崎尚志、東京工業大学工学院経営工学系助教の池田直史、東京工業大学院生の奥村光貴との共同研究の結果の速報であり、今後の追加分析に基づく筆者たちの最終的な結論と完全には一致しない可能性もあることはご留意いただきたい。
今回の調査対象に関しては、日本CFO協会会員の事業会社約2,000社に対して、各企業のCFOおよび財務・経理責任者の方々にメールでサーベイへのご協力依頼を送付させていただいた。このほか、コーポレートガバナンス報告書で経営者報酬を個別開示している東証1部上場企業105社のCFOの方々と、東証マザーズ上場企業225社のCFOの方々には、郵送にてサーベイへのご協力依頼を送付している。
2017年3月15日