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2025年12月1日 

米国弁護士 秋山の視点
素人でもできるアメリカ雇用訴訟

秋山 武夫

ニューヨーク州弁護士

A. アメリカ雇用法の原則

 前回でも説明した通り、アメリカの雇用制度の根幹は「任意雇用(Employment at Will)」にある。これは、「従業員がいつでも辞める自由を持つと同時に、雇用主もまたいつでも従業員を解雇できる」という原則である。雇用法の教科書では、会社は “with good reason,” “with bad reason,” or “without reason” で解雇できると説明されるほどである。労務を含む経営判断は企業の自由な裁量に属し、裁判所の判断に馴染まないとされる。経営上の都合、経済的理由、あるいは単に「相性が合わない」といった主観的理由でも解雇は合法となり、会社側からの解雇理由の説明は不要である。

 このように「任意雇用」が原則である限り、本来なら訴訟は起こらないはずである。にもかかわらず、アメリカで雇用訴訟が乱発されるのは、①この原則にいくつかの例外が存在すること、②日系企業の雇用慣行や行動パターンが極めて定型化しており、訴訟もまたその「フォーマット」に沿って容易に組み立てられること、③最終的な勝ち負けが、法律ではなく、事実認定に支配され、陪審員の判断に委ねられるという3つの要素による。以下、この3点について説明する。

2025年12月1日

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