2017年7月18日
- パネリスト(ご氏名50音順)
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岩品 信明 氏
国際税務部会 顧問
TMI総合法律事務所 パートナー
弁護士・税理士加本 亘 氏
国際税務部会 顧問
ホーガン・ロヴェルズ法律事務所外国法共同事業 パートナー
弁護士・ニューヨーク州弁護士高原 宏 氏
国際税務部会 特別顧問
元武田薬品工業 コーポレートオフィサー経理部長
EY税理士法人 シニアアドバイザーヒールシャー・魁 氏
国際税務部会 顧問
デロイト トーマツ税理士法人 エグゼクティブ オフィサー
日系企業サービスグループ(Japanese Services Group: JSG)
コーリーダー兼BMO (Business Model Optimization)ジャパンリーダー
- モデレータ
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村田 守弘 氏
国際税務部会 座長
村田守弘税理士事務所代表
元KPMG税理士法人代表社員、 KPMGアジア・太平洋地域税務担当
財務マネジメント・サーベイの概要
村田 BEPSとは、Base Erosion and Profit Shiftingの略で日本語では「税源侵食および利益移転」と訳されます。スターバックス、アマゾン、グーグルといった名だたるグローバル企業が「税金を払っていない」と名指しで批判を受け、OECD(経済協力開発機構)が国際税務に関する税制あるいは国内税制が十分機能しているかを検討し、BEPSに対する問題解決に向けた15の行動計画を公表しました。これをもとに、各国の税制が協調して対応していくことになっています。
今回のグローバル税務フォーラム開催にあたって、「BEPS対応状況に関する実態について」アンケートを行いました。その財務サーベイについて、まずご紹介します。調査概要は以下の通りです。
・主催:日本CFO協会国際税務部会
・調査対象:日本CFO協会会員を主体とした企業のCFOあるいは幹部社員
・有効回答社数:170社
・調査方法:オンライン上でのアンケート調査
・調査期間:2017年3月31日から2017年5月
今回のサーベイでは、ポイントは大きく3つ挙げることができます。①BEPSについての情報収集について、②BEPS対応について、③関心あるBEPSの行動計画についての3点です。
【ポイント①】BEPSについての情報収集について
一つ目のBEPSについての情報収集について、アンケートでは「大手税理士法人や弁護士事務所からの情報について」問いました。「十分な情報を入手していると思う」が61%、「情報収集は不十分である」が8%、そして「情報収集していない」という企業が31%ありました。
「不十分と考える理由」については、「情報が氾濫していて本当に必要な情報にたどり着くのに苦労する」「十分に咀嚼できない」「具体的にすべきことが整理されているとはいえない」「基本的に無料のデータのみ」、さらに「大量の発信情報から自社グループに本当に必要な情報を取捨選択する時間・手間をかけられない」などが挙げられました。
私が驚いたのは、情報収集していない会社が31%と想像以上に高かったことです。そのプロファイルを深掘りしてみると、ほとんどの会社は海外売上比率が10%以下の会社でした。すでに情報収集していると回答した69%の会社の海外売上比率は10%以上で、その多くは50%以上でした。つまり、海外売上高比率50%以上の会社は、ほとんどが情報収集をしているということです。
【ポイント②】BEPS対応について
二つ目のBEPS対応について。「BEPS対応は仕掛かり中である」が64%、「BEPS対応は未着手である」が21%、「BEPS対応は不要と考える」が12%です。不要と考える12%部分は、やはり海外比率が低い会社であろうと思います。「BEPS対応がすでに終了した」は3%ですから、97%近くの企業は、まだ終わっていない、あるいは未着手、不要と考えるということになります。連結売上高1兆円以上で海外比率もかなり高い2社から、「未着手である」という回答を得たのは少し意外でした。
【ポイント③】関心あるBEPSの行動計画 について
⾏動計画1:電⼦経済の課税上の課題への対処
⾏動計画2:ハイブリッド・ミスマッチの効果の無効化
⾏動計画3:効果的なCFC ルールの構築
⾏動計画4:利⼦等の損⾦算入を通じた税源浸⾷の制限
⾏動計画5:有害税制への対抗
⾏動計画6:租税条約の濫⽤防止
⾏動計画7:恒久的施設(PE)認定の人為的回避の防止
⾏動計画8-10:移転価格算定の結果と価値創造の整合性の確保
⾏動計画11:BEPS の測定とモニタリング
⾏動計画12:義務的開示制度
⾏動計画13:移転価格⽂書化及び国別報告書
⾏動計画14:相互協議の効果的実施
⾏動計画15:多数国間協定の策定
三つ目の関心あるBEPSの行動計画について、15ある行動計画の中から関心の高い順にベスト3を挙げると、①「行動計画13:移転価格文書化および国別報告書」(66%)、②「行動計画8~10:移転価格算定の結果と価値創造整合性の確保」(40%)、③「行動計画7:恒久的施設認定の人為的回避の防止」(34%)となっており、無形資産の観点からの「移転価格」への関心の高さがうかがえます。次に「恒久的施設」へ関心が集まり、他の行動計画に対する関心は必ずしも高いとは言えませんでした。
2017年7月18日