2025年11月17日

企業価値創造経営の本質(第53回)
事業ポートフォリオ・マネジメントについて
考える(第25回)
手島 直樹
小樽商科大学大学院 商学研究科 教授
今回の連載では、事業売却巧者の具体的な行動を確認していきたい。5つのアクションが存在するが、売却価格の引き上げ、コストの削減、そして事業売却の体系化の3つに大きく分類される。
1. 売却前に事業を改善する
もちろん、事業が「負け犬」や「非ベストオーナー」だからこそ売却の対象となるのであるが、事業の業績に合わせて売却額が上昇することが期待できるため、売却以前における事業改善は有効なアプローチとなる。実際、米国におけるスピンオフに関する調査によれば、スピンオフ実施の2年前から事業改善に取り組んだ企業の株価パフォーマンス(親会社と分割企業の合計ベース)は、実施後に事業改善に着手した企業を大きく上回っている。また、売上成長率や収益性にも顕著な差が見られる。これは、事前に事業改善を済ませておくことにより、スピンオフ後にはストランデッドコストなど分割によって生じる問題の対応に集中できることが要因と考えられる。
2025年11月17日




