2023年7月18日
グローバル・コミュニケーション
トランスランゲージング考
猿橋 順子
青山学院大学国際政治経済学部教授
一般社団法人グローバル・ビジネスコミュニケ―ション協会理事
はじめに
近年、トランスナショナル、トランスカルチャーなどのように、「トランス」を接頭語にもつ新しい語を耳にする機会が多くなった。そう思って見渡してみると、飛行機の乗り継ぎの時に使われるトランジット、ある言語から別の言語への翻訳を意味するトランスレーション、人やモノの輸送や運送を示すトランスポート、売買の代金決済の際に用いられるトランザクションなど、「トランス」を接頭語にもつ語はたくさんある。いずれも、転換や移動、変容の意味を含んでいる点で共通している。ちなみに、民間信仰における神との交信や恍惚状態などもトランス(trance)の語が用いられる。英語のスペルは異なるが、語源をさかのぼると重複が見られる。全体的に、超越や越境するといった意味の重なりが認められる。
2023年7月18日