百貨店事業一辺倒からの脱却

　J.フロント リテイリングは、2007年大丸と松坂屋が経営統合して設立した純粋持株会社である。「百貨店を中心としながらも、複数の小売事業を展開するグループ事業として成長を目指す」という思いから、社名にはあえて百貨店名を用いなかった。統合当時のそうした思いは、2020年3月、都市型商業施設の運営開発を行うパルコの完全子会社化により現実のものとなった。

　グループ理念は、前身の大丸「先義後利」（義を先にして利を後にするものは栄える）、松坂屋「諸悪莫作、衆善奉行」（諸悪を犯すなかれ、善行を行え）の社是の趣旨を、わかりやすい言葉であらわした。二つの社是は、「お客様をはじめ、ステークホルダーの皆様のことを考え抜き、事業活動を通じて社会課題の解決を実現する」ことを意味し、いまでいう共通価値創造（CSV）につながるものだ。

　「くらしの『あたらしい幸せ』を発明する」というビジョンは、事業環境がめまぐるしく移り変わる中、小売業の枠にとらわれることなく、顧客の新しい幸せの実現を目指している。

　こうした理念とビジョンのもと、サステナビリティの概念を戦略に組み込むことで、経営に強く要請されている社会課題の解決に取り組み、中長期の企業価値向上、持続可能な経営を実現したいと考えている。