2019年3月15日
企業価値創造経営の本質[第15回]
株主還元政策を考える
(株主還元政策のトレンド)
手島 直樹
小樽商科大学大学院 商学研究科 教授
はじめに
前回までの連載では5回に分けて資本構成について議論してきたが、今回からはファイナンス理論において資本構成と同様に重要な株主還元政策について考えていきたい。結論から言えば、株主還元は企業価値創造において「二次的」な要因であり、投資家が声高に主張するほどの影響はない。株主還元は、所詮は資金という「商売の元手」の「社外流出」であり、キャッシュフロー創出とは真逆の行為である。企業価値創造の基本は、資金を社内で再投資し、キャッシュフローを持続的に生み出すことなのだ。とはいえ、株主還元政策の変更が株価に大きく影響するのも事実である。そこで本連載においては、株主還元政策に関するさまざまな理論に基づきながら「How(配当と自社株買いの選択)」「How Much(株主還元政策の金額)」そしてディスクロージャーポリシーについて議論していきたい。
2019年3月15日