2022年2月15日
私は日本銀行を経て2014年からアジア開発銀行(ADB)に奉職し、主にASEAN+3(日中韓)の金融協力、アジア債券市場育成イニシアティブ(ABMI)の事務局などを担当している。ABMIとは、アジア各国における資本市場・債券市場の形成、金融規制改革、決済インフラの整備などを支援する枠組みだが、その一環としてグリーンボンドをはじめとするサステナブルファイナンスの育成にも取り組んでいる。本日はこうした知見を踏まえ、アジア各国での多様な資金調達の可能性を展望していきたい。
サステナブルファイナンスの時代が到来
ESGやSDGsは、いまや企業経営に不可欠なテーマだ。各社は環境・社会課題への対応を、自社のビジネスの文脈、また顧客も含めたステークホルダーエンゲージメントの文脈で捉え直すよう求められている。取り組みの対象はサプライチェーン全体に及び、仕入れ先で生じた人権侵害や環境破壊は、企業価値を大きく毀損するリスクとなる。
特に気候変動問題に関しては、各国の中央銀行・金融監督当局がNGFS(Network for Greening the Financial System:気候変動リスク等に係る金融当局ネットワーク。ADBもオブザーバーとして参加)などの場で、規制への反映も視野に入れた議論を展開している。企業の取り組みいかんでは、金融機関との取引や市場からの資金調達にも影響し、資本コストの上昇をもたらすリスクが出てきた。こうしたことから、年間調達総額5,000億ドル以上のグローバル企業26社は、仕入れ先に対し、科学的根拠に基づくCO2削減目標の設定を求めている。
2022年2月15日