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 会計の世界において、メディアでは不正会計やIT化による会計事務職の減少などネガティブな話題も目につくが、AIやIoTという言葉に象徴される“社会の変化”は、経営者のマネジメントスタイルに変化をもたらし、さらにはバックエンドである会計の世界も着実に変えていくのではないかと考えられる。特に2016年はAIのビジネス分野への適用が本格的にスタートしたと言えよう。そこで当コーナーでは、企業会計や経営管理の基盤を支えている最先端のプレイヤーの方々をゲストとして迎え、IoTの時代に会計や経営管理の仕組みはどのように変わるのか、変わるべきなのか、またそこで会計に携わる人は何処を目指して行けば良いのか、将来を見据えたお話を伺っていく。

 第6回は、人の言葉を理解し、推論する“ワトソン”で、認知型コンピュータの先陣を切るIBMから、根本秀人氏と中山裕之氏にご登場いただいた。

(インタビュー・執筆:日本CFO協会主任研究委員 櫻田修一)

人の言葉を理解し、推論を立てる認知型コンピュータ

櫻田 IBM ワトソンの普及、活用が目覚ましいですね。

中山 おかげさまで。構想中のものを含めると、100を優に超えるコグニティブプロジェクトが動き始めています。

櫻田 そんなに動いているのですか。ワトソンというとAIの代表例というイメージを持つ方も多いと思いますが、IBMでは一貫して、コグニティブコンピューティング(認知型コンピューティング)という言葉を使われてきましたね。

中山 これまで我々はワトソン について、AIという言葉は使ってきませんでしたが、ついに2016年10月ラスベガスで開かれたIBM World of Watson(WoW)2016で、ジニー・ロメッティCEOが「ワトソンはビジネス用のAIプラットフォームとしてはNo.1の存在である」と初めて発言しました。ただし、ジニーが言うAIは、Artificial Intelligence(人工知能)ではなく、Augmented Intelligence(拡張知識)です。コンセプトはあくまで人間が持っている知識の拡張なのです。

櫻田 「AIとワトソンはどう違うの?」と一般の人が思ったとき、「そもそもAIって何?」という疑問がわいてきます。

根本 おっしゃる通りです。実はAIの定義は明確にされておらず人によって定義が異なるのが現状です。

櫻田 ディープラーニングをAIと呼ぶ人もいますね。

根本 ディープラーニングはAI技術の一種であって、本来のAIの概念はもっと広いですよね。このような技術用語に対して、より具体的な用途を鮮明にしたコンセプトとしてIBMが打ち出したのが「コグニティブ」という用語で、認知や人との繫がりを意識するメッセージを含んでいます。「コグニティブ」テクノロジーを用いたサービスがワトソンです。

中山 技術要素としては、当然ディープラーニングも機械学習も使っていますが、コグニティブは、膨大なデータから推論を導き出せます。人工知能の定義が曖昧な中で、我々が目指しているのは、世の中にある膨大なデータを使って新しい資産を生み出すことです。そのために必要であれば、機械学習やディープラーニングも活用します。

櫻田 では「コグニティブ」とは何なのでしょうか。

中山 日本語に訳せば「認知」です。ワトソンは自然言語、画像、音声なども理解することができます。IBMの研究者の言葉を借りれば、「テクノロジーは人間のいろいろな限界を超えてきた」と言うことです。船や飛行機は肉体の限界を超え、電子メールはコミュニケーションの限界を超えた。コンピューティングは生産性の限界を超えたと表現することもできます。コグニティブは複雑性の限界を超えていきたい。今後のコンピュータに最も必要なものは、「認知能力」であると我々は認識しています。

櫻田 ワトソンおよびコグニティブの特徴はどのようなものでしょうか。

中山 今回ここまでワトソンが注目を浴びるようになった背景を考える必要があります。2014年は、IT業界にとってエポックメイキングの年であったと言われています。ネットワークにつながるデジタルデバイスの数が世界の人口を超え、デジタル空間におけるデータが爆発的に増加しました。膨大なデジタルデータのほとんどはインスタグラムの写真やツイートなどのように構造化されておらず、従来のコンピューティングで理解できる構造化データは1割か2割という世界がまもなくやってきます。ワトソンに使われているコグニティブテクノロジーは、非構造化データである自然言語、音声、画像、性格などをも理解することができます。それが最大の特徴の一つです。

 もう一つ、従来のコンピュータはプログラムを書いて演繹的に答えが出る作り方をしていましたが、コグニティブは真逆の帰納的なアプローチをとっています。まず、ここにある膨大なデータからどんな仮説が立てられるかという推論を作る。それを学習して仮説のバリエーションプロセスが回せるのが大きな特徴になっています。

 「21世紀の大事な経営資源はデータであり、それは天然資源のようなものだ」ともジニーは言っています。天然資源(natural resource)も、一つのキーワードです。原油はそのままでは使うことはできません。精製して加工することで、ガソリンになったり、ジェット燃料になったりします。データも同じです。膨大なデータは単なるデータで、それだけでは意義を見出せません。このデータを精製・加工し価値あるものにすることが重要になります。ワトソンが人工知能であるかどうかの定義はさておき、世の中にある膨大なデータを企業活動に活かせるインテリジェンスに変えていく──IBMとしてはコグニティブ・テクノロジーを駆使してこのような支援をしていきたいと考えています。

櫻田 CFOや経理財務の領域ではどのような使い方ができるとお考えですか。

中山 例えばM&Aでデューデリジェンスを行う際、ワトソンに「こんな企業群が欲しい」と自然言語で問いかけると、ネット中を駆けずり回って「このような企業があります」と探してくる。そこで「この株を買うとどうなるの?」と問うと、財務諸表を見に行って資産状況を調べる等の、インタラクティブな世界がくるのではないかと思います。

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2017年1月16日

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