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 会計の世界において、メディアでは不正会計やIT化による会計事務職の減少などネガティブな話題も目につくが、IoTという言葉に象徴される“社会の変化”は、経営者のマネジメントスタイルに変化をもたらし、さらにはバックエンドである会計の世界も着実に変えていくのではないかと考えられる。そこで当コーナーでは、企業会計や経営管理の基盤を支えている最先端のプレイヤーの方々をゲストとして迎え、IoTの時代に会計や経営管理の仕組みはどのように変わるのか、変わるべきなのか、また、そこで会計に携わる人はどこを目指して行けばいいのか、将来を見据えたお話を伺っていく。

 第3回は2015年1月にSAPジャパン株式会社に招聘され、代表取締役会長に就任された内田士郎氏をお迎えした。

(インタビュー・執筆:日本CFO協会主任研究委員 櫻田修一)

ERPの会社からインダストリー・プラットフォームの会社へ

櫻田 第4次産業革命の時代と言われ、ドイツではインダストリー4.0と呼ばれる基幹業務の変革が進められています。IoTで革新的な進歩が実現したとき、ビジネスはどのような変革を遂げるのか。本日は、技術革新が社会やビジネスにどのような変化をもたらし、そうした変化が起こったとき、経理はどう変わり、経理パーソンはどうすればいいのか。また、マネジメントや経営管理、会計の世界にどんな影響を与えるのかというお話を伺わせていただければと思います。

内田 私がSAPに来てから、ほぼ1年半が経ちますが、10年前、櫻田さんとベリングポイントでご一緒させてもらった頃のSAPとは様変わりしました。ERPの会社から、ERPも含めたインダストリー・プラットフォーム全体を提供する会社に進化してきています。

 SAPは1972年創業、現在世界各国に約7万8千人の従業員を擁し、売上高は2015年通期で208億ユーロです。創業以来44年の歴史がありますが、2010年以降の5年間で、高速インメモリーデータベースを中心としたインダストリー・プラットフォームのSAP HANAという新たなSAP主力製品の登場、人材マネジメント分野のSuccessFactors、購買、調達分野のAriba、オムニチャネルコマースソリューションのHybris、経費精算分野のConcurなどのクラウドビジネスの買収などを経て、ビジネスが大きく変革しています。

 変革は加速していて、私が入社した2015年には売上全体に占めるERPの割合は4割でしたが、今はすでに4割以下になっています。ERPの売上は引き続き増加しているのですが、クラウドビジネスを中心に他のビジネスが大きく伸びてきたのです。2010年には売上の9割方はERPが占めていたのですから、まさに激変です。

櫻田 変化のきっかけのようなものはあったのでしょうか。

内田 2004年、イノベーションのジレンマに危機感を抱いたSAP共同創業者の1人であり現在、SAPグローバルの会長であるハッソー・プラットナーは安住の地からの脱出を強く訴えました。実際、2008年のリーマン・ショック時には売上も停滞し、このままでは買収されて終わってしまうような危機感が全社にありました。その際、彼が惚れ込み、社内に取り入れたイノベーション手法がデザインシンキングです。これによってSAPは大きく変わりました。プラットナーはデザインシンキングを実践していたIDEO創業者のデヴィッド・ケリー氏と意気投合して、3,500万ドルの私費を投じて、スタンフォード大学にd.schoolを設置します。

櫻田 今、デザインシンキングに多くの企業が目を向けています。SAPはまさに先駆けであった訳ですね。

内田 そうした背景の中で、クラウドビジネスの買収、SAP HANAなど自社の製品開発、協業(共同イノベーション)によって、2010年から2015年の5年間で売上は倍増しました。ERP一本の会社から、インダストリー・プラットフォームの会社に変わっていったのです。

 例えば、組み立てブロックのおもちゃを想像してみてください。私がSAPの導入に携わっていた1990年代のR3の頃は、15ほどの大きなブロックを組み合わせてERPパッケージの導入をしていましたが、直近5年で組み合わせることのできる製品群は2,000を超えており、そのピースも細分化されてきました。大きなブロックを組み合わせていたものが今や小さな2,000ピースにより、ありとあらゆることを組み合わせることが可能となっています。A社、B社、C社のデジタル化はERPで各社に最適な形をつくりあげていきます。SAPの提供するインダストリー・プラットフォーム上でA社、B社、C社がつながって、連携していく。SAPがやろうとしているのは、イメージとしてはそういうことです。

 かつてのSAPでは、お客様と一緒につくっていくなんてことは考えられませんでした。それが、組み立てブロックのピースが2,000個もあって、それをどう使えばいいかを考えるとき、顧客と一緒に「こんな新たなビジネスモデルをやりたい」と考え、イノベーションを実現していく。そんな会社になってきています。

櫻田 フロント系のシステム、例えばスマートフォンのアプリケーションのように、各機能を部品としてパーツ化しAPIを標準化してサードパティーと連携することによって新しい機能や価値を提供していくという、ウェブのテクノロジーと同じような考え方になっているのですね。

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2016年7月15日

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