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東芝は「仏」作って「魂」を入れられるか

磯山 友幸
経済ジャーナリスト
元日本経済新聞記者

不正会計問題に揺れる東芝は、大手製造業の中ではいち早く「委員会設置会社(今年の法改正で「指名委員会等設置会社」)」の制度を導入し、コーポレート・ガバナンスでは進んだ会社というイメージを振りまいていた。そんなこともあって、組織を挙げての「利益かさ上げ」が表面化して以降は、「まったく役に立たなかった社外取締役」といった論評が噴出し、あたかも社外取締役や委員会設置会社といったコーポレート・ガバナンスの制度そのものに欠陥があるかのような批判が浴びせられている。

 言わずもがなのことだが、東芝問題は、制度に欠陥があったのではなく、半ばその制度を「骨抜き」にしてきた経営者に大きな責任があるとみるべきだろう。いくら立派な仏を作っても、魂を入れなければ、何の役にも立たないのである。それどころか、東芝の場合、経営者の独断を支える仕組みとして委員会設置会社の枠組みが“活用”されていたとみることもできそうだ。

 委員会設置会社の「肝」は指名委員会である。社長を選ぶ権限を握るわけだから、この委員会が機能すれば、社長の暴走などあり得ない。委員会設置会社が普及しなかった背景には、経営トップの「権力の源泉」である人事権を、社外取締役に渡すことへの不安感があるとしていた経営者が少なくない。人事権を渡すということは、自分自身がクビになる可能性があるということなわけだから、ある意味当然とも言える意識だろう。

 今年5月の改正会社法で「監査委員会等設置会社」が認められたのにも、そんな経営者の意識が反映している。委員会設置会社にはしたいが、指名委員会には抵抗がある、という経営者の本音に配慮したものだともいえる。

 その指名委員会を東芝は見事に骨抜きにした。というよりも、逆手に取ったと言った方がよいかもしれない。今回の問題が発覚するまで、指名委員会は会長と社外取締役2人の合計3人で構成されてきた。法的には過半数が社外でなければならないので、それを満たしていたわけだ。2014年3月期以降は、室町正志会長と、社外取締役の谷野作太郎・元中国大使、伊丹敬之・一橋大学教授の3人。社外は外交官と学者だ。形のうえでは谷野氏が委員長だが、社長や役員候補を社内から選んでいる以上、圧倒的に力を持つのは会長であることは容易に想像がつく。

 2012年に西田厚聡氏が会長に留まったまま、佐々木則夫氏が社長から副会長になり、田中久雄氏が社長になったのをみても、東芝の場合、会長に事実上の人事権があったことが分かる。

 ちなみに、報酬委員会は社内2人、社外3人で構成されているが、これも社内2人は会長と社長が務めてきた。おそらく簡単には社外取締役が口を出せないムードだったに違いない。監査委員会の社外取締役も会計の素人ばかりだと批判された。東芝は2003年6月に委員会設置会社に移行したが、それ以降ずっと、同じような委員構成を踏襲してきたのだ。「魂」はついぞ入れる気がなかったということなのだろうか。

 社外取締役に外交官や学者、検察OBなどを採用してきたのも特徴だ。経営に知見の乏しい人たちをわざわざ選んだのではないかと思えるほどだ。外交官だった谷野氏は、2001年から6年間も同じ東芝の社外取締役を務めていた人物で、すでに79歳。歴代の社長会長とも懇意で、指名委員会の委員長としては“最適”ということだったのかもしれない。

 東芝は9月中旬に開く株主総会に諮る取締役候補者を11人とし、うち7人を社外取締役とすると発表した。田中社長の辞任後に社長を兼務していた室町会長が社長に専念するという。社外取締役候補には企業経営者3人、会計専門家2人、法曹1人、学者1人が挙がった。伊丹氏が引き続き社外取締役を務めるのが目を引く。

 これが総会で承認されれば、東芝の取締役会は6割が社外ということになる。過半数が社外というケースが多い欧米流に「形」の上ではなるわけだ。これをもって、先進的なコーポレート・ガバナンスを目指すということだろう。

 だが、問題は、果たしてそこに「魂」が入るのかどうかである。まず注目すべき点は、指名委員会がどんな構成になるかだろう。委員会のメンバーは、全員を社外取締役とするとしているが、果たして室町氏をクビにできるような力のある人たちが就くのかどうか。注目したい。

2015年9月15日

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