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舩山 龍二

株式会社ジェイティービー 相談役

観光立国に向けて

 政府が観光立国を本格的な国策として打ち出したこの10年間は、私がJTBに入社した52年間で最もうれしい10年だった。2003年の小泉総理(当時)の観光立国宣言以降、2007年観光立国基本法施行、2008年観光庁設立と「ビジット・ジャパン・キャンペーン」が繰り広げられてきた。観光庁設立に伴って具体的なアクションを起こすために同年日本政府観光局(JNTO)が設立され、それに呼応すべき民間のカウンターパートとして2011年日本観光振興協会(日本観光協会、日本ツーリズム産業団体連合会が合体)が発足。以来、政権が代わっても変わることなく、官は観光庁、民間は日本観光振興協会の二頭立てで観光立国を推進している。

 活動の目的は四つある。①「国際観光の推進はわが国のソフトパワーを強化する」、②「少子高齢化時代の経済活性化の切り札となる」、③「交流人口の拡大により地域を活性化する」、④「国民が誇りと自信を取り戻す」ことが国策としてのポイントとなる。

 2014年6月には、「観光立国実現に向けたアクション・プログラム2014」(観光立国推進閣僚会議)が出された。訪日外国人2,000万人時代に向けて、外国人受入れ体制の充実、世界に通用する魅力ある観光地づくり、MICE(マイス/Meeting、Incentive、Convention、Exhibition)を柱とした国際会議の誘致促進等が、掲げられている。

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日本の観光事情

 この半世紀の、日本ツーリズムの推移を見てみると、海外旅行者数、国内旅行者数、訪日外国人数ともに、1964年を原点としてドラマティックに急上昇している。1964年はご承知のとおり、新幹線が開通し、海外旅行が自由化した年である。日本の観光も、まさにこの年からスタートした。観光に限らず、日本のすべての産業が同じような経緯をたどっているのではないだろうか。

 さて、内訳を見てみると、国内旅行は当初急速に伸びるが、21世紀に入って下がり続けている。海外旅行は劇的に伸び続けるもバブル崩壊後下降に転じる。対して、インバウンドは2003年のビジット・ジャパン・キャンペーン以降、急激に上がってきた。日本人の国内旅行、海外旅行は、ライフサイクル上、成熟期・衰退期にある。対する訪日外国人インバウンドは、まさに今成長期を迎えている。

 日本のツーリズム急成長の要因としては、①経済効果(経済成長と円高)、②インフラを含めた供給効果、③旅番組などの情報効果、④需要の喚起、⑤ライフスタイルの変化、⑥ビザや外貨持ち出しなど規制緩和、⑦戦争や災害、病気の有無などがあげられる。そして今、日本と同じことが、アジア各国で起こっている。88年にオリンピック、93年に万国博覧会を開催した韓国、2008年にオリンピック、2010年に万博を開催した中国は、それぞれ海外旅行ブームを迎えている。

 そうした状況下、2012年の旅行市場の構成要素を見てみると、日本国内における旅行消費額は22.5兆円、外国人の日本国内における消費は1.3兆円で、外国人消費の割合は全体の5%ほどに留まっている。ヨーロッパ各国は、スイス30%以上、スペイン40%と外国人の消費割合が軒並み二桁を占める。日本人の国内消費が下がり続ける中、国内消費の拡大の鍵は、日本人の国内旅行を増やす(滞在日数の増加)か、外国人に日本に来てもらうかだ。この二つがあって初めて観光立国が成り立つ。観光とは、「国の光を観る」ことだ。住んでよい場所を人は訪ねる。住んでよし、訪れてよしの環境をつくるには、地域アイデンティティを高め、交流人口増、経済・雇用活性化を図る必要がある。そのためのアクションプランが次の四つだ。

①地域観光資源を磨く(景観、環境、歴史、文化 ― オリジナリティ)…インフラ整備(交通、案内・標識など)・情報発信
②これからのあるべき旅行形態へ転換(グローバルスタンダード)…滞在型(連泊化)、リピーター化、時間消費型観光のサービスシステムへ(泊食分離・体験・交流・学習型)
③これから伸ばすべき企画…ニューツーリズム(エコツアー、産業観光、グリーンツーリズム、ヘルスツーリズム)、着地型商品企画、健全低廉な家族旅行・長期滞在、交流型(都市・農山漁村交流、海外と青少年交流、姉妹都市交流)、イベント・コンベンション(MICE)の誘致・創造
④人材養成(最前線実務者、観光マネージメント、地域観光戦略、観光研究部門)

 次に、日本人の海外旅行について。日本人の海外旅行は成熟期を迎えている。2013年の日本の人口当たり出国数は13.7%。パスポート所有者は約3,000万人。10年で500万冊ほど減少している。各国の出国率(韓国29.6%、台湾47.3%、中国7.2%、シンガポール160.2%、香港118.7%、イギリス91.3%、アメリカ9.2%、ドイツ92.9%)と比べると人口の多い、中国・アメリカを除いて、軒並み日本よりもはるかに高い水準となっている。

国際間大交流の時代

 世界は大交流の時代となっている。2013年、国際間交流で訪れた人の数は、欧州5億6,300万人、アジア・大洋州2億4,800万人、米州1億6,900万人。合計すると、年間およそ10億人の人が交流している。国際間交流増加の背景には、インターネットによる交流増加に伴う、対面交流のニーズの高まりが伺える。LCC等、交通の発達もあり、今後ますます政治、経済、文化、スポーツ等の交流は拡大するであろう。

 こうしたツーリズム産業の世界的な経済波及効果をWTTC(World Travel and Tourism Council)は、約6.3兆ドルと試算している。これは、世界GDPの9.1%を占める。

 世界の人流と旅行総需要(インバウンド市場)について、各国のインバウンド市場規模(2015年)と年平均成長率(2011~2015年)で見ると、市場規模はアメリカが図抜けて大きい。スペイン、フランス、中国、イタリア、ドイツと続く大規模市場に対して、残り各国は群雄割拠の状態にある。成長率で見ると、ブラジル・タイ・フィリピン・ベトナム・インドネシア・ペルー等が15%を超える高成長市場で外国人の受け入れにしのぎを削っている。日本は2015年に2兆円、伸び率5%ほどと予想される。日本の海外旅行者数は減少したとはいえ世界で11位(2010年)だが、外国人旅行者受入数は33位(2012年)と、中国はもちろん、マレーシア、香港、タイの半分以下、マカオ、韓国、シンガポールにも及ばない。日本の国力をもってして、考えられない状況にある。日本も遅ればせながら国際インバウンド競争に負けぬよう前進するときが訪れている。

インバウンドへの期待

 2003年にビジット・ジャパン・キャンペーン開始以降、インバウンドはうなぎのぼりで増加してきた。2009年のリーマンショック、2011年東日本大震災の影響で足踏みしたが、2013年には回復し1,000万人の大台を初めて突破した。2014年は1,300万人に迫る勢いで記録的な伸びを見せている。政府の海外旅行規制が外れた中国が凄まじい勢いで伸びている他、フィリピン、タイ、インドネシア、ベトナムからの旅行者数の伸びも著しい。

 日本政策投資銀行「アジア8地域・訪日外国人旅行者の意向調査(平成25年版)」によると、「海外旅行ならどこに行きたいか」という調査で、8か国中6か国が日本を第一位にあげ、オーストラリア、韓国、スイスを抑えて総合第一位となっている。日本旅行を選んだ理由の一位は日本食で、景観、温泉、歴史・文化、治安と続く。

 日本を訪れた外国人の消費額は、2013年1兆4,167億円と2年連続で30%以上伸びている。重要なことは、日本に来て日本の文化、歴史、そして日本人に触れて、親しくなることだ。そのために良質な旅を提供しなければならない。

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Two Way Tourism

 最後に、日中韓の交流の状況に触れたい。日韓間の交流が520万人、中韓間830万人、日中間419万人で、合計1,769万人と世界でも最大級の交流が日中韓にはある。私はこの交流をぜひ拡大すべきだと思う。2006年7月に北海道で第一回中日韓観光大臣会議が開催され、共通問題をお互いに可決し、互いの交流を拡大していくことが宣言された。以降2012年に途絶えた同会議がようやく再開されることになった。私は観光はこんなことで途絶えてはならないと思う。日中韓は互いの交流を深め、互いの理解を深めることを真剣に考えければならない。かつて日本航空出身の作家、深田祐介氏は言った。「もし戦前、今のように海外旅行が非常に普及していたら太平洋戦争は起こらなかっただろう」と。今から25年前、東ドイツは旅行に限って西ドイツからのビザを免除した。それがベルリンの壁崩壊の契機の一つともなった。交流は情報であり、平和をもたらす安全保障となる。Two Way Tourism――旅の双方向性を保つことがなにより重要なのだ。

 ご清聴ありがとうございました。

※本稿は、2014年12月2日開催の「第14回CFOフォーラム・ジャパン2014」の講演内容を編集部にてまとめたものです。

2015年1月15日

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