2018年2月20日
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再成長に向けて――赤字からの反転
本日は「キリングループの再成長へ向けて」というテーマでお話ししたい。キリンは2011年に買収したブラジルのビール会社の業績悪化により、2015年に1,000億円を超える減損を認識し、上場来初の赤字決算となった。これを一つのターニングポイントとして、2016年から3カ年の中期経営計画を発表し、「再成長に向けて」着実にその計画を遂行中である。
キリングループは1907年創立、110年の歴史を持つ会社である。2015年、現社長の磯崎功典が社長に就任以来、構造改革をけん引してきた。「自然と人を見つめるものづくりで、『食と健康』の新たなよろこびを広げていきます」という経営理念のもと、ものづくりの技術にこだわり、世界の人々の健康、楽しさ、快適さに貢献していくことを掲げ、主力の酒類・飲料事業は国内はもとより、かなり早い時期から海外展開を開始している。
オーストラリアでは、1998年から投資を始め、現在、ビールのマーケットシェア40%強を占めている。酒類の製造販売を行っているライオンネイサンは投資総額約3,000億円で取得したが、それに対して、500億円強の営業利益を出す成功事例となっている。2007年に乳飲料事業にも参入しているが、投資額約3,000億円に対し、営業利益50~60億円程度で、投資対リターンという意味では成功とはいえない事例である。
アジアでは、2002年フィリピン市場に参入。サンミゲルビールへの投資は約1,300億円、48%のマイノリティ出資を実施。90%を超えるマーケットシェアを保持し、営業利益率も30%を超える。毎年100億円以上の配当がある超優良な資産となっている。フィリピン経済の発展に伴い、市場全体も伸びており今後も成長が期待できる市場となっている。2015年にはミャンマーのミャンマービールに55%出資、約700億円を投入。マーケットシェア約80%、営業利益率40%超で初年度から90億円の営業利益を出している。
後ほど触れるが、2011年に3,000億円を投資したブラジルのビール会社は、すでに売却済みである。
2016年のグループ売上高は2兆750億円で日本綜合飲料(国内のビール、清涼飲料、ワイン)が50%以上を占めるが、営業利益(1,418億円)は、海外綜合飲料、医薬・バイオケミカルでよい具合に分散している。IFRSベースではのれん償却費がなくなり、ほぼ均等に三分の一ずつ程度の利益貢献がある構造になっている。
過去の業績を振り返れば、2015年以降順調に営業利益は回復しているが、当期純利益については2015年に計上した減損によって上場来初の赤字に転落。しかしそこをターニングポイントとし、その後、中期経営計画を発表して、着実に進展させることで、株価も大きく上昇し、日経平均もアウトパフォームしている状況にある。
2018年2月20日