2017年11月15日
企業価値創造経営の本質[第7回]
βの質を改善する
手島 直樹
小樽商科大学ビジネススクール 准教授
βには3種類が存在する
前回の連載では、CAPMの主要パラメーターであるβについて紹介をした。βは、広く活用されるコンセプトでありながら批判が多いことについても前回の連載で議論した通りである。そこで今回は、βの質を改善するアプローチについて紹介したい。
では、βの質の改善とは何か。前回の連載では、株価とTOPIXをベースにキリンホールディングス(以下、キリンHD)とアサヒグループホールディングス(以下、アサヒGHD)のβを算出したが、このβは「素」の状態であるため未修正βと呼ばれる。この未修正βを2つのアプローチを使って改善することがβの質の改善であり、その結果として得られるのが、修正βと業界βの2つのβとなる。アプローチに関しては後述するが、注意が必要となるのは、質が改善すると言っても、修正βや業界βの方が未修正βよりも必ずしも「正しい」とは言い切れないことである。そのため、状況に応じて適切なものを選択することが求められる。βが3種類になることにより逆に企業価値評価が複雑になるという意見もあるが、選択肢があることに価値があると私は考えている。では、2つのアプローチを見ていきたい。
2017年11月15日