2017年10月16日
財務マネジメント・サーベイ
投資家との対話に向け
不安が残る決算・開示部門の実態
中田 清穂
日本CFO協会主任研究委員
有限会社ナレッジネットワーク 社長
公認会計士
日本CFO協会では昨年(2016年)に引き続き、グループ会社を含む企業における連結決算実務を取り巻く課題とその取組み状況について実態調査を行った。今回は、企業情報の開示制度の大変革に対して、当事者である上場企業における課題認識の程度と対応状況についても意識調査を行った。
2014年8月に経済産業省から公表された伊藤レポートで、四半期開示等に過度に反応した市場の短期実績重視志向や、企業側からの中長期的戦略や施策に関する効果的な情報開示がなされていない、などの指摘がなされてからすでに3年が経過している。その間、四半期開示の義務化の廃止や株主総会開催時期の後ろ倒しなどの審議は、経産省から金融庁の「ディスクロージャー・ワーキング・グループ」を経て、現在行われている安倍内閣の「未来投資会議」で、来年春をめどに一定の結論を得る見込みとされているが、「作成者サイド」がどの程度理解し、どのように対応しようとしているのかを把握することで、上場企業が今後の企業開示制度大変革への対応を検討する上での参考に資する目的で行ったものである。
開示制度改革に関する調査結果の前に、まず昨年に引き続き実施された連結決算の実態調査について見てみたが、連結決算の実態が1年で大きく変化することはなく、概ね昨年度と比べて大きな変化は認められなかった。したがって、以下の調査結果に関する評価は昨年の記事を参考にしていただき、本稿では、開示制度改革に関する部分に絞って解説することとしたい。
(ご参考)連結決算実務における現状と課題(昨年度の調査結果と解説)
(1)連結決算発表のタイミング
(2)連結決算内容への不安
(3)連結決算担当者の人数とスキル
(4)連結決算担当者のコミュニケーション能力への課題
(5)連結業務専門の人材配置への課題
(6)課題解決に向けた取り組み
(7)データ収集体制の限界に向けた取り組み
四半期開示義務化の見直しについて
現在義務となっている四半期開示について、廃止を含めて見直すことが政府で議論されていることを知っているのは、「詳しく知っている」と「大体は知っている」を合わせると7割弱であった(図1)。3割余りが未だに「知らない」と回答している。
これを売上高の企業規模別に見ると図2となる。100億円未満の企業では、「知らない」が7割近くを占めているが、100億円以上の企業でも「知らない」が概ね3割前後であった。議論が3年以上にもなり、来年春には結論が得られるというのに、「知らない」企業が多いように感じられる。これは、「決定されるまで情報収集も行わない」という日本企業の習性と思われる。
2017年10月16日