2016年11月15日
TREASURY FORUM
トレジャリーの組織構造
川上 真希
株式会社リコー
グローバルキャピタルマネジメントサポートセンター
シニアマネジメント
日本CFO協会 主任研究委員
はじめに
日本CFO協会主催のグローバル財務部会の第二期を終え、日本企業全体のグローバル財務管理の意識やその実行に大きな変化を実感している。数年前は限定的な企業が実現していた「グローバル財務管理」が、ここ数年で多くの日本企業が研究を開始し、新たな分野への挑戦が積極的かつ段階的に進んでいると認識している。第三期の財務部会の運営に、より多くの期待がかかる一方、「グローバル財務管理」に関する各社のレベル感や取り組み度合い、また進むべき道も異なり、ここで基礎となる考え方を可能な限り整理することで、理論の基盤構築とその定着を目指し、それぞれの企業が向かうべき「グローバル財務管理」発展の一助になればと考えている。
トレジャリーとは
まず、「トレジャリー」の定義を明確にしておく必要がある。私が二十数年前に日系自動車メーカーに入社し、最初に配属された部署の名前は「資金部」であった。英語名は「Finance Department」であり、「Treasury」ではなかった。多くの日本企業では、同様の機能を「財務」もしくは「資金」という組織名で表現している。当時は国内ビジネスを軸足に海外展開に力を注いでいた時期であったが、資金部の業務内容は主として、短期および長期の資金繰り作成とその精度向上、資金繰りに基づく銀行・市場からの資金調達、海外子会社資金サポート、為替ヘッジ、債権消込、そして現金出納業務であった。
一方で、英国コーポレートトレジャラー協会(ACT)と米国財務プロフェッショナル協会(AFP)が定義するトレジャラーの主な責任として共通して重点に置いているのが、財務リスク管理、資金調達を含む対銀行関係取引、キャッシュまたは流動性マネジメントである。
大きな括りで考えれば、日本の「財務」とACTやAFPの「トレジャリー」の定義は変わらないが、それぞれの国の金融政策や企業のグローバル展開の程度により、その組織の目的や、構造に違いがあると考える。
2016年11月15日