2015年7月15日
GLOBAL MANAGEMENT グローバルマネジメント
橋が架かっていないところに橋を架ける
後藤 英夫
EYアドバイザリー株式会社
ストラテジック・オフィサー
「改革がなかなか進まない」「想定したスピードが出ていない」は企業各社共通の悩みだろう。今回はその解決のヒントを社会システム変革における2つの先行事例から紹介試みたい。
島津斉彬と西郷隆盛を結んだ「庭方役」
最初の事例は江戸時代末期の島津斉彬と西郷隆盛のケースである。西郷は斉彬の「庭方役(にわかたやく)」であった。「庭方役」とは何か? 藩主である斉彬が庭を散歩中に偶然出会って会話をしてしまうという建付けを与えられた下級の者が「庭方役」である(図1)。
身分に厳しい当時の封建制度の下では、薩摩藩主であった斉彬と一下級武士でしかなかった西郷が直接会話をするには煩雑な手続きが立ちはだかっていた。面倒な手続きをすべてスキップして直接会話をする方便が「藩主がたまたま庭に出て散歩をしていた時に、庭で作業をしていた者に声をかけた」という建付けの利用であったのである。藩政改革についての複数の建白書によって斉彬からその存在を認知されていた西郷は、斉彬の事実上の直属の部下として活動するために「庭方役」に任じられたのである。これが、その後、日本の社会システムを変革させることになる西郷を浮上させた背後にあったスキームである。
2015年7月15日