2025年11月17日

米国弁護士 秋山の視点
日本製鉄のUS Steel買収について[その4]
「軒を貸して母屋を取られる」
秋山 武夫
ニューヨーク州弁護士
はじめに
2025年5月30日、トランプ大統領はペンシルベニア州ピッツバーグにあるUS Steel本社で演説を行った。150億ドル(約2兆2千億円)での買収に加え、設備近代化のための中長期的投資として140億ドル(約2兆1千億円)という実に300億ドル(4兆円)もの巨額のコミットメントを引き出したことを「自らの勝利」と誇らしげに掲げ、聴衆を熱狂させた。US Steelの従業員たちは、自らの雇用が保障されたことに安堵と歓喜の声をあげた。その光景は、あたかも “偉大なる将軍” が戦地から凱旋し、戦利品を携えて帰還したかのようであった。
一方、日本の経済メディアは「大逆転」「粘り強い交渉」「戦略的勝利」と、日鉄の成果を高らかに称えた。
果たして本当の勝者は日鉄なのか、それとも米国(トランプ政権)なのか。本稿では、買収後の日鉄が直面するであろう現実と、その構造的リスクを検討する。
2025年11月17日




