2015年1月15日
グローバルキャッシュマネジメントと財務の高度化
栗原 宏
KPMG/あずさ監査法人
金融事業部・金融アドバイザリー部
マネージング・ディレクター
近年、日本企業は国内での成長率の鈍化と人口減少という逆風の中、海外でのM&Aを活発化させるなど、ますます国際化の進展に力を入れている。そうした中、グローバルに広がる企業活動の血液ともいうべき資金の流れをどのようにコントロールしていくかは、財務担当者のみならず、企業経営者の大きな関心事となっている。しかし、欧米のグローバル企業の多くはすでに先進的なキャッシュマネジメントを導入し、それをうまく使いこなしているのに対し、日本の企業は国際化が進んだ一部の先進的な企業を除き、まだ本格的にキャッシュマネジメントをグローバルで導入している例はきわめて少ないと言わざるをえない。これには、日本で長く続いている金融緩和のおかげで企業側において資金の効率化に対する意識が高まりにくかったこと、メインバンク制が存在していること、あるいは事業部や子会社の権限が強い日本の企業文化の中では資金集中化がなじみにくかったことなど、さまざまな理由が考えられるであろう。しかし、アベノミクスの影響で企業の成長投資が海外に向かいだした昨年以来、海外のグローバル企業と対等に競争するためには、財務の高度化が必要であることがようやく広く理解され始め、日本企業のキャッシュマネジメントに対する関心が急速に高まっている。
2015年1月15日