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外資系勤務とキャリア形成

古森 剛

株式会社CORESCO
代表取締役

 キャリアの話をする際に、頻繁に登場するのが「外資系か日系か」という視点だ。個々の企業が持つ個性の違いを鑑みるに、この括り方自体が粗いのであるが、さりとて無意味な視点でもない。筆者自身の経験や周囲の知人の様子を見ると、「外資系企業での経験」から得られる傾向値のようなものは存在する。今回は、外資系企業における勤務経験がキャリア形成におよぼす意義について考察してみたい。

メリトクラシーという考え方

 「外資系」と「日系」との対比において、キャリア形成という視点で意味のある要素を拾うならば、筆者は「メリトクラシーを重視する姿勢」をあげたい。

 メリトクラシー(meritocracy)とは「実力主義」のことだ。組織の編成・運用にあたって、実力のある人材を重用すること、組織内の階層を実力にしたがって構成することであり、しばしば官僚主義的な組織(bureaucracy)との対比で引用されることがある。

 実力主義は、成果主義と近い概念だが同じものではない。成果主義は、仕事のアウトプットを重視する考え方であり、対比する考え方はプロセスを重視するものだ。実力主義というのは、こうした成果とプロセスの対比的視点ではなく、「その人がこの会社の業績に貢献する上でどれくらい力があるのか」という視点だ。

 「実力」とは、各人材の中期的な仕事の成果と、仕事の過程で見え隠れする様々な行動から推察・期待される将来への潜在性を総合したものと定義している場合が多い。また、少数ではなく出来るだけ多くの意見を集約した「見立て」として、その人材の「実力」が評価されるのが通例だ。

 少数でこの議論をすると恣意的になりがちだが、多数の目線と意見を集約すれば、当たらずと言えども遠からずの見解となる。所詮は「見立て」であるから主観性の高いものだとしても、透明性の担保された集合的主観ともいうべきものが形成される。そのようにして形成された「実力」観で人材を評価し、組織を構成していくのがメリトクラシーだ。

外資系の最大の特徴はメリトクラシーの実行速度

 日系であれ外資系であれ、競争意識を持って経営している企業で「我が社に実力は不要だ」と考えている企業はないだろう。少なくとも実力のある人材を適切に生かそうと組織運営をしているはずだ。そうした中で、外資系と日系で何か違いがあるとすれば、実力主義の実行速度だ。

 見立てられた個々の人材の「実力」に対して、現実の人事的アクションをどの程度ストレートにとるか。仮に人材の実力を見立てる過程が同等であっても、その後の人事的アクションの取り方は、一般的に外資系のほうが日系よりも速いと言える。結果的には拙速と言われる場合もあろうが、とにかくアクションの速度は速い。

 例えば、「実力がある」と多くの目が認めた人材を、どの程度スピーディに上位役職に登用できるか。外資系のステレオタイプでは、この点は非常に鋭角的だ。前例の有無を気にしない場合が多く、「飛び級」的な抜擢人事も、本当にその実力があるとみなされれば実行される。むしろ、そういう動きを歓迎する向きもある。

 一方、日系のステレオタイプでは、実力を認知された人材であっても、「飛び級」させない場合が多い。それには日系なりの文脈や哲学があるのだが、本稿ではその議論は割愛しよう。キャリア形成の観点で見ると、個人の実力と組織における人事的アクションの実行速度は、日系と外資系で大きく異なる場合が多いという点が重要なのだ。

「個」に対するフェアネス

 メリトクラシーを概念ではなく実行面で重視する度合いが高い環境では、個人の成長が加速される可能性が高い。努力して仕事に取組み、企業に貢献し、それを多くの人に認知されることが出来れば、どんどん新しいチャレンジが巡ってくる。そのチャレンジに成功しても失敗しても、個人としては経験値がどんどん高まって行く。

 逆に、実力をつけようとせず、経歴や立場、ポリティクスなどに頼って生きていこうと考える人は、メリトクラシーの環境下では評価されない。短期的に目立つことはあっても、長きにわたって多くの人の目をごまかすことは出来ない。メリトクラシーを実行する組織は、「個」に対するフェアネス(公正性)が高い環境だと言える。

 「個」へのフェアネスが高い企業が必ず競争に勝つとは言い切れない。「個」を抑えて、組織全体として強さを発揮して勝つモデルもあり得る。勝負とは非情なものだ。しかし、キャリア形成という観点で見ると、「個」へのフェアネスが担保された組織の方が、個々人の努力と持ち味を活かして成長していく機会が多いことは確かだ。

 本稿では、その視点を外資系と日系というステレオタイプを使って論じているが、本当は企業ごとに違いがあるわけだ。個々人のキャリア形成を考える上では、「個」に対するフェアネスを重視した環境に身を置く方が、自己実現につながるキャリア形成がしやすい。もちろん、本人がチャレンジを続ける姿勢を持つことが前提となる。

 筆者としては、日系・外資系を問わず、そうした「個」へのフェアネスを重視した組織環境が増えていくことを密かに期待している。また、そうした環境が増えることにより、個々人の側でも、努力して仕事と向き合い、企業に貢献し、認知を得て羽ばたこうとする意識が増えていくのではないかと思う。

2015年6月15日

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