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円安による「国内外需」急増が景気を支える

磯山 友幸
経済ジャーナリスト
元日本経済新聞記者

アベノミクスの効果もあって、為替の大幅な円安が定着している。2011年に1ドル=75円台にまで上昇した円相場は、今年10月には6年ぶりに1ドル=110円台を付けた。当初は円安になれば日本からの輸出が増え、生産が増えて、雇用が生まれるなど、景気回復に拍車がかかると見られてきた。ところが、円安になって輸出採算は改善、企業収益は大幅に好転したものの、輸出数量はほとんど伸びていない。円安で輸出ドライブがかかるという見立ては大きく外れたのである。

 背景には、長年にわたる円高で輸出企業が生産拠点を海外にシフトさせたことがある。製造業からサービス業へと日本の産業構造が大きく変わったこともある。エネルギーや食糧などを海外から輸入している日本には、円安はむしろマイナスだ、という批判も出始めている。

 では、円安は景気にマイナスで、役に立っていないかというとそうではない。違った形で円安効果が生まれているのだ。

 最も効果が大きいのは訪日外国人の急増である。今年7月には1カ月間で126万9千人が日本を訪れた。月間としては過去最多で、前年同月比で27%、26万人も増加した。円安になったことで、日本への旅行費用が安くなっていることが直接のきっかけ。多くが中国や台湾などからの観光客だ。アジアでは数年前から観光ブームが起きているが、その波が円安をきっかけに一気に日本に押し寄せている訳だ。訪日外国人は昨年1年間で初めて1千万人を超えたが、東京オリンピックが開かれる2020年には2千万人誘致することを目標に据えている。このところの訪日外国人の急増ペースが続けば、目標達成は十分に可能だ。

 急増している外国人観光客のお目当ては、何と言っても買い物である。長年デフレが続いた日本の物価は世界的にみても安い。何せ3千円も出せば丸の内で豪華なランチが食べられる。ホテルも世界の主要都市に比べて格段に安い。フランスの高級ファッションブランド品なども、中国で買うよりも価格が安いことが多いという。しかも、日本の百貨店ならば偽物をつかませられるリスクはまずない。

 そんな外国人観光客の日本国内での消費が盛り上がっているのだ。輸出につながる海外での需要を「外需」と呼ぶが、日本国内に突如として「外需」が生まれている。いわば「国内外需」だ。

 百貨店などはこれをいかに取り込むか、知恵を絞っている。外国語が話せる店員を増やしたり、中国語などの表示を整備する動きが広がっている。

 日本国内では今年4月に消費税を8%に引き上げた影響がジワジワと出て消費の足を引っ張っている。だが、こうした外国人による消費には消費増税の影響はあまりない。高額品の場合、外国人旅行者は免税手続きをすれば、消費税がかからないからだ。国もこうした「国内外需」を景気底上げにつなげようと後押ししている。これまで免税手続きは1店舗で1万円以上、家電製品やカバンなどを購入した場合が対象だったが、今年10月1日から、5千円以上の食料品や飲料、化粧品なども免税対象になった。

 こうした「国内外需」は、従来の輸出増よりも景気への即効性が高い。例えば、自動車メーカーが輸出をした場合、その代金が回収されるには少なくとも数カ月かかり、その効果が利益として決算に反映されるには半年から1年はかかる。しかも、それがボーナスや給与の増加となって表れるにはさらに半年から1年は時間が必要だ。

 ところが、観光客が旅館や食堂、土産物店などで消費をした場合、経済の最末端に直接おカネが落ちることになる。当然、人が足りなくなればパートやアルバイトなど雇用にも直結する。

 安倍晋三内閣は「地方創生」を重点課題に掲げている。公共事業による景気浮揚が限界に来ている中で、農業再生などが叫ばれているが、農業の生産性が上がり、収益性を上げて、雇用が生まれるには、まだまだ時間がかかる。そんな中で、最も手っ取り早いのが観光に訪れる外国人による「国内外需」を取り込むことだ。地方自治体などもこぞって中国や台湾からの観光客誘致に力を入れている。

 観光客がモノを買って本国に持ち帰れば、輸出と同じ効果がある。しかも輸送費は本人持ちだ。「国内外需」という形を変えた「輸出」は今後しばらく増え続けるだろう。

2014年11月14日

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