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グローバル・コミュニケーション

日中英語コミュニケーション

本名 信行

一般社団法人グローバル・ビジネスコミュニケーション協会 代表理事
青山学院大学名誉教授

はじめに

 中国では、英語に対して積極的な取り組みが見られる。私たちは、ビジネス、観光、学術交流などで中国人とコミュニケーションする場合、日本語と中国語に加えて、英語を使う度合いが高まっている。英語はお互いに等距離のことばなので、中立的な感じがして使い勝手がよい。ここでは、中国の英語事情と、発達しつつある中国英語について概観する。

中国の英語政策

 中国の英語政策で特筆すべきことは、英語メディア戦略である。中国中央テレビ(CCTV)は2000年9月よりチャンネル9を設立して、毎日24時間英語番組を放映している。これはCNNやBBCなどを利用したものではなく、中国人スタッフが中国事情にフォーカスして制作し、多くの中国人がアナウンスやナレーションを担当する番組である。中国全土で視聴でき、いろいろな役割を果たしている。

 さらに、2010年には、CNC Worldが開設された。これは英語ニュースチャンネルで、24時間放送されている。しかも、これは中国の巨大メディアである新華社通信、人民日報、そしてCCTVの共同事業である。中国、アジアのみならず、世界のニュースを流す構想のもとで設立された。

 中国は英語をグローバル・コミュニケーションの言語と認識して、それをフルに活用し、中国的観点を世界に発信しようとしている。その目的は明らかで、世界における中国イメージの改善である。天安門事件、チベット問題、そして海洋進出などで、中国は国際世論の批判を浴びており、国際コミュニケーション戦略の練り直しがなされ、こうしたメディア展開に至ったのである。

 また、プリントメディアでも、進展が見られる。従来は、日刊英字新聞はChina Daily(1981年刊)が中心であったが、2009年にはGlobal Timesが加わった。また、中国企業はアメリカの週刊誌「ニューズウィーク」の買収に手を上げたりして、物議を醸したこともある。これは不発に終わったが、今後こういった動きは再度見られるかもしれない。

 中国の英語政策は英語教育の重視にもつながっている。「英語」は小学校から大学院まで実質的に必修科目である。少し前の数字だが、英語学習者人口は3億から3億5千万人といわれ、途方もない数である。小学校では、一般に小1から英語学習を開始し、1-2年は週2.5コマ(1コマは40分)、3-6年は週4コマの学習が基準である。都市部では、小1から週5コマ、6コマも珍しくない。日本と比べると、雲泥の開きである。

 大学には、英字新聞記者、英語放送キャスター、ニュース翻訳者などを養成する専攻もある。特に有名なのは中国伝媒大学(Chinese University of Communication)の英語学科で、国際新聞専攻、番組キャスター専攻、映像翻訳・制作専攻などの人気が高い。しかも、この大学は北京に本校を置きながら、主要都市に分校を持ち、多くの英語人材を養成している。彼らは中国の英語TVや英字新聞の興隆を支えているのである。

中国英語の発達

 中国の大都市(上海、北京、広州、深圳など)にある大学や企業では、英語はよく使われている。インターネットやeメールでは、中国人同士でも英語を使うことがけっこうある。それに伴い、中国英語(Chinese English)と呼ばれる変種も発達しつつある。中国事情を表す語句が英語でいろいろと造られている。

 公的な政策語句はほとんど英訳されている。最近のOne Belt, One Road(一帯一路)は、その一例である。その他、one country, two systems(一国両制)、harmonious society(和諧社会)、four modernizations(4個現代化)、moderately affluent life(小康社会)、spiritual pollution(精神汚染)、などがある。

 また、中国人はbreaking the three irons(打破三鉄)とよく言う。そのひとつはiron rice bowlである。すなわち、鉄でできたご飯茶碗で、落としても壊れないことから、倒産を経験することのない官庁や官僚を指す。日本人ならさしずめ、「親方日の丸」といったところであろう。タイム誌は、これをイタリック体にせずに採用した。

 …Twang does not come from a privileged family. The eldest son of a policeman, Twang joined the civil service…Hong Kong's iron rice bowl…soon after high school. (TIME March 21/2005)(曽は名家の出身ではない。警察官の長男として生まれ、高校卒業後すぐに、終身雇用を保証する香港の公務員の道を選んだ)

 確かに、多くの中国人が国内外で英語を使うようになると、中国の言語文化を映す英語表現がたくさん見受けられるようになる。面子表現は日本人にも役立つ。日本人も「私の顔を立ててください」と言いたいことも多いであろう。中国人の言い方を聞いていると、Give me face.(給我面子)と言っている。

 これは日本人にも使いやすい。こういう言い方をすると、アジア人として英語を使っていることが実感できる。次の例は、日本のビジネスマンにとって参考になる。

1. I know your face is bigger than mine.(あなたの面子のほうが私のよりも重要なのはわかります。/「でかいツラ」でないことに注意)

2. But please take my face into consideration, too.(しかし、私の面子も考えてください)

3. Please give me some face, will you?(私の顔も立ててください)

4. If I go back to Japan without this contract, I will become faceless in my company.(この契約なしに帰国すれば、私は会社で顔が立ちません)

おわりに

 中国は世界のグローバル化を念頭に、国際コミュニケーション戦略を重視している。英語メディアの創設、そして英語教育の充実などはその一環に組み込まれている。そして、英語学習者は飛躍的に増大しつつある。そのような英語環境のなかで、中国英語の展開が見られる。それは中国文化と密接な関係があり、英語を話すからといって、中国人としての文化的アイデンティティを失いたくないという願望の表われなのである。日本人にも参考になる態度ではなかろうか。

2017年9月15日

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