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2016年11月15日 

ワールドトレンド

世界に見る
“モダンファイナンス”の実践
~BLACKLINE社「In the Black」参加報告~

 2016年9月21日から2日間、オーストラリアのシドニーで経理のイベント「In the Black」が開催された。クラウドで経理自動化支援サービスを提供する米国BLACKLINE社が主宰のイベントである。日本ではまだ無名であるが、このBLACKLINEは既に海外ではコカ・コーラやナスダックといった世界的な企業を中心に、1,400社以上で13万人を超える経理担当者が利用している急拡大中のサービスである。

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 経理自動化といっても、同社のサービスは、最近よく見られるいわゆる仕訳入力の自動化のようなAIやロボティクスといった要素技術を使った自動化ではなく、経理部門としては避け難いエクセルを使っての人的作業や、部門間のデータ収集業務を徹底的に簡素化することに焦点を当てている。また、月末の締め作業に時間を投入するやり方ではなく、銀行口座情報などの異なるデータソースと経理部門で管理する会計帳簿データとの突合や照合作業を自動化させることで、従来の月末月初集中型の部門業務サイクルを月間を通して平準化する支援をしてくれる。これは「月末月初の深夜残業は避けられない」という経理部門の常識を真っ向から否定する。

 今回のシドニーでのイベントでも、KPMGやデロイトといったビッグファームが監査の立場からも自動化による効率化を推奨し、SAPもERPとの連携による更なる高度化・効率化という観点で同社のサービス活用を後押ししていたのだが、何よりも、BLACKLINEを導入している企業の経理責任者らが集まり、どれほどの作業効率が向上したかをパネルや講演の形で発表し、経営管理や監査の観点で有効というよりは、参加している企業のユーザーが、いかに便利で使いやすいかという点を強調しているのが印象的だった。実際に、BLACKLINE事業責任者のアン・ファーロング氏も、過去には経理責任者としてこのサービスを導入したユーザーの一人だったのだが、このサービスに惚れ込んでついに昨年同社に転職したのだという。それにしても、経理に携わる人々が直面している問題点は、日本だけでなくどこの国でも共通しているのだと痛感させられた。

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 このイベントでは、一人の日本からの参加者 大山祐之氏(ウィズリッジ合同会社)に会った。「突合作業をエクセルを使わないで行えるのかという疑問は、自分自身が実務担当者として長年抱き続けてきたものですが、海外ではすでにそれを実行している事例が既に数多くあることを知って驚きました」と言う。外資系企業での経理経験を活かし、現在日本企業の経理業務のアドバイザリー業務を手掛ける大山祐之氏は、ここ数年日本でも経理の効率化・高度化の相談が多くなってきたことをきっかけに、さまざまなツールを探したところ、このBLACKLINEを知ったという。半年前にシンガポールで開催された同じイベントにも参加しており、現在BLCKLINEの日本導入を推進しているという。

 BLACKLINEがスローガンとして掲げているのは“モダンファイナンス”だ。言い換えれば世界中のCFO組織が現在の部門業務をいち早く“モダンに、イマ風に”切り替えるために必要なツールを提供しているということである。

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 CFO組織を、CEOのビジネスパートナーに変えていこうと願っているCFOは多いであろう。しかし、悲しいかな、迫り来るレポート期日と戦いながら、いつも通りの自社組織で長年の“伝統”のごとく守られてきた定型業務のマネジメントにかなりの時間が費やされているというのが現実ではないだろうか。欧米諸国に比べ、CFO組織の機能品質において後れを取っていると言われる日本であるが、CFOクラスの方々はCFO組織の本来あるべき姿を十分に描けている。「今までのやり方を変える」という気負いも十分に持っているに違いない。しかし、いかに変革をしたくても、属人的な定型業務が排除されない限り第一歩は踏み出せない。CFO組織が早急に取り組むべきことは、“たかが確認作業”に不必要な時間を割いてしまう現場の体制から自組織をいち早く脱却させることだろう。本当に経営判断に必要な数字をさっさと固めて、すぐに数値の分析業務に取り掛かれる業務フローを組織内で確立させることだ。それを具現化しようとすると大抵は新たな業務を増やしてしまいがちだが、逆の発想からまずは現場業務において、最も非効率かつ非生産的な業務の排除と簡素化から始めてみてはどうだろうか。いたずらに時間を要するエクセル上での突合作業をできる限り排除することと言えるかもしれない。今すでにやっている作業を楽にするということが、海外の先進企業で広がりつつある“モダンファイナンス”への第一歩になるのではないだろうか。

(谷口 宏・一般社団法人日本CFO協会専務理事)

経理部門は何に時間を割いているのか?

大山 祐之
ウィズリッジ合同会社

 現場の経理部門から毎月のレポートが自分の手元にいつも期日ギリギリに提出されることに苛立つ経験があなたにもあるのではないだろうか? だとすると、現場の経理部門は何に最も多くの時間を割いているかを本当にご存知だろうか? 部外者からすると、きっと難しい会計処理法や特殊な経理仕訳を考えることに時間を割いていると思いがちだが、それは大きな誤解だと言っておこう。むしろそれが本当なら、コストをかけて採用した人材が会計や経理の専門知識をフル活用して精度の高い数字を生成しているわけなので、そのようなことに時間を割くことはむしろ褒められるべきことだろう。ところが、実際に現場の経理部員たちの多くの時間を奪っている作業は、ただのデータの取りまとめや単なる確認作業に過ぎないのだ。そこには経理の専門知識も税法の知識もまったく関与していない。社内のERPデータと、社内の各担当者が独自に作成して共有フォルダに保存したエクセルファイル内の数字との突き合わせ作業に、永遠にも思える時間が消費されてしまっているのが現実だ。こんなことに時間を割いていれば当然のことながら、CFOのもとへ提出されるタイミングもいつもギリギリにならざるを得ない。そしてCFOは十分なレビューができないまま経営陣へレポートすることになる。それから間もなく経営会議に走り込み、そこでCEOから受ける鋭い質問にも十分なアカウンタビリティを果たすことができない事態が生じてしまっていることはないだろうか。

※ウィズリッジ合同会社は、日本におけるBLACKLINEのゴールドチャネルパートナーです。

2016年11月15日

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