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武田薬品のグローバル化とパラダイムシフト

 私は13年4月に退任するまで、45年間武田薬品に勤務した。2003年、財務責任者の経理部長になった年、武田薬品の海外売上比率は43%、進出国28カ国、従業員数1万5,000人(うち外国人5,000人)だった。それから10年後の2013年、海外売上比率は56.6%、進出国80カ国、従業員数3万1,000人(うち外国人2万3,000人)に変化した。海外売上比率は13ポイント程度の増加にとどまっているが、進出国および従業員数の伸びは著しい。事業展開のグローバル化と、J-SOX導入、四半期決算開始、IFRS基準への変更と会計・財務基準(ガバナンス)のグローバル化が同時に進行した10年であった。携帯端末に限らず、日本はガラパゴス現象と言われるように、ルール、制度、慣習が独自の進化を遂げたきらいがあったが、株主、従業員、顧客などのステイクホルダーのグローバル化に伴い、グローバル標準への収斂を迫られていると思う。背景には薬品業界を巡る三つのパラダイムシフトがあった。

 一つは、医薬品業界の2010年問題とR&D対象の変化である。日本の医薬品企業が1990年前後に特許申請した、生活習慣病を中心とした医薬品の特許期間(20年)が2010年前後に切れて売上が落ちる――業界では極めて深刻な問題だった。日本の医薬品業界が活路を見出したのが、がん等に有効なバイオ医薬品であった。武田薬品もR&Dをバイオ医薬品にシフトする。しかし、研究開発コストが高く、自社開発していたのでは時間も間に合わない。そこで、M&Aとライセンスに舵を切ったのだ。

 二つ目は、ジェネリック医薬品の使用促進によるマーケット特性の収斂である。日本は先進国の中でジェネリック医薬品の比率が頭抜けて低い。そのため特許が切れても、米国のように急激に売上が落ち込むことはなかった。そうした日本のマーケット特性が、ジェネリック医薬品の使用促進によって、完全にグローバル競争の中で一本化に近づいている。

 三つ目は、先進国から新興国への医薬品の成長マーケットのシフトである。ここ5年間ほどの成長率を見ても、先進国は軒並み一桁の前半で推移し、新興国は二桁成長を続けている。成長しようと思えば、新興国に打って出るほかない。

 2010年問題に伴う利益率の高い医薬品の売上減、買収・導入品の増加に伴う原価率アップ、バイオ医薬品開発に伴うR&D費用の増加等の結果、日本の主力医薬品企業の収益性は、5年間で平均12ポイント低下した(05~07平均22.2%→12~14平均10.4%)。欧米(26.3%)と比べると16ポイントの差がついた。

 財務責任者としての課題は山積していた。戦略課題解決のために何を考え、何を実行してきたか。10年間を振り返ってみたい。

2016年4月15日

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