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監査等委員会設置会社の行方

磯山 友幸
経済ジャーナリスト
元日本経済新聞記者

5月1日に施行された改正会社法によって、日本に新たなガバナンス形態の株式会社が誕生することとなった。「監査等委員会設置会社」。取締役会の中に、社外取締役の過半数からなる「監査等委員会」を置くもので、従来の監査役の設置が不要になる。

 現在の日本の株式会社の大半は取締役とは別に監査役を置く「監査役設置会社」である。2003年の法改正では、これに加えて委員会設置会社(今回の法改正によって「指名委員会等設置会社」に名称変更)が誕生したが、人気は今ひとつだった。

 委員会設置会社では、「指名委員会」「報酬委員会」「監査委員会」の3つの委員会を設置して、いずれも社外取締役が過半数を占める必要があった。業務執行は「執行役」に任せ、取締役は経営監督に徹するという「欧米型」のスタイルだったが、なかなか日本では広がらなかった。ピークでも70社ほどが採用するにとどまり、最近は60社を下回る状態が続いていた。

 経営者が採用に躊躇した最大の「ネック」は指名委員会だった。社長を決めることになる委員会を社外取締役の過半数としているため、ともすると社外の人に人事権を握られることになりかねない。その点にどうしても抵抗感が強かったのである。

 そんな中で、従来の日本の仕組みである監査役設置会社と、欧米型の中間的な仕組みとして、今回生まれることになったのが、「監査等委員会設置会社」というわけだ。和洋折衷ともいえる新しい形態の会社制度をどれだけの企業が採用するのか、疑問視する声もあった。だが報道などによると、3月決算の上場企業では100社以上が変更に踏み切るのではないかと見られている。

 予想外ともいえる広がりを見せている背景には、社外取締役の導入促進問題がある。会社法改正では社外取締役がひとりもいない場合には、「(社外取締役を)置くことが相当でない理由」を説明しなければならなくなった。置かない方が良い理由を説明せよというわけだから、なかなか至難である。

 さらに、金融庁と東京証券取引所の有識者会議がまとめたコーポレートガバナンス・コードがこれに加わった。上場企業の「あるべき姿(ベスト・プラクティス)」として、独立性の高い社外取締役2人以上の選任が求められることになったのである。このコードも、遵守が義務付けられたわけではないが、遵守しない場合にはその理由を説明しなければならない。

 東証の調べでは、昨年7月段階で、1部上場企業1,814社の74.3%が社外取締役を置いていたが、467社がゼロだった。また、ひとりしか社外取締役を置いていない企業は725社にのぼった。そうした企業が社外取締役を探した時に、最も手っ取り早かったのが、すでにいる社外監査役を社外取締役に横滑りさせる方法だったのだ。

 上場企業にはすでに半数の監査役を社外にするよう求められている。監査役3~4人を置いた場合、2人が社外なのだ。監査等委員会設置会社に変更して、社外監査役を社外取締役にすれば、問題は簡単に解決するというわけだ。

 ただ、これで従来の監査役設置会社よりもガバナンスが強化されることになるかどうか疑問である。監査役は取締役とは別議案で株主総会で選ばれ、任期も違う。実質的に社長が選んでおり、独立性が乏しいと長年批判され続けてきたことで、制度の見直しが繰り返されてきた結果なのだ。今では監査役会としてチームで仕事をし、直属のスタッフを持っているところも少なくない。
 これを一気にゼロに戻してしまい、取締役からなる監査等委員会に移行して、従来以上の監視機能を持つことができるのか。取締役自身がお手盛りでチェックしているという批判を浴びることにならないか。

 監査等委員会設置会社の広がりは、日本独自の制度である監査役によるチェック体制から、社外取締役という欧米で一般的なスタイルによるチェック体制へと、大きく変わっていく変革の第一歩になる可能性は十分にある。だが、それは、あくまでも日本型から欧米型へという「進化」の途上になくてはならない。間違っても、監査役制度が骨抜きになり、かつてのチェックの緩い取締役会へと逆行することがあってはならないだろう。

2015年5月18日

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